苑池雅遊模様帷子

えんちがゆうもようかたびら


苑池雅遊模様帷子

 

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時代     江戸時代 18世紀


 

寸法     168.0cm  63.3cm


 

生地・技法  白荢麻地 茶屋染・刺繍


 

 

茶屋染(茶屋辻)と呼ばれる武家女性の帷子。洛中洛外図を想像させるようなデザイン構成である。


 

 淡黄色の雲が洛中洛外図のようにたなびく風景模様で、藍の濃淡により涼感漂う武家女性の帷子。梅の小花と引き霞で飾られた雲がたなびき、右肩の雲間より御簾と屏風を設えた家屋を見せている。そして腰から裾にかけては、広大な庭内に華やかな幕を引き、苑池に竜頭鷁首の舟を思わせる唐風な舟を浮かべて楽しむ王朝貴族の宴を思わせる風景が展開する。肩より裾へ苑池が広がる光景のそれぞれの形象の大きさには変化が見られず、帷子全体が細やかに埋めつくされており、そこに遠近感は感じられない。このような空間処理が、かえって桃源郷をイメージさせる。
 染法は、藍の濃淡で染められた茶屋染といわれる帷子(茶屋辻)で、模様にそって麻地の両面または片面に防染糊を置き、数度の藍染あるいは藍を挿して濃淡を出している。またこの茶屋辻とは別に、『衣裳図録 紀州徳川家旧蔵』(文化女子大学蔵)に「御辻」の記述があり、さらにこれに類似するデザインを刺繍や摺匹田・染めで表した「白麻地藤雲模様帷子」(共立女子大学蔵)には、「さらし 白御辻藤御模様」と名称を記した畳紙も伝えられているという。このことから、この一連の帷子は御辻または本辻と呼ばれ、茶屋辻同様に武家女性の夏の衣料であったことが知られる。

( N.O. / K.M. )

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