吉原細見模様小袖

よしわらさいけんもようこそで


吉原細見模様小袖

 

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時代     江戸時代 18世紀


 

寸法     161.7cm  64.5cm


 

生地・技法  茶縮緬地 友禅染・刺繍


 

 

江戸吉原の遊里の風景を表した小袖。地味な色合いの細部には洛中洛外図屏風のようなドラマチックな場面が描写されている。この細密表現は高度な友禅技法に裏付けられている。遊里の風景を着こんで闊歩した町方の粋で洒落た遊び心が伝わってくる。


 

 江戸吉原の遊里の風景を細密に表した腰高模様の小袖。当時の裾を引く着用効果を考慮してか、画面は背縫い・脇j縫いの絵羽が合っており、風俗屏風を友禅染と刺繍で再現したかのようである。染法は模様の細部に至るまで写実的に友禅染の技巧を凝らしている。たとえば、外にかかる暖簾の模様から室内の畳、そこに置かれた膳・たばこ盆・調度類、さらには縁側や庭の石に至るまで、糊置きと多彩な色挿し・暈かしも加えて表している。あまりに細部にこだわりすぎたためか、建物の大きさと防火用水の大きさなどにアンバランスなところも見える。また吉原へ籠で通う若旦那・二本差しの武士、そこで働くかむろや飯たき女・着飾った遊女など一人一人の喜怒哀楽の表情・衣裳の模様・髪飾り・持ち物まで、多彩な繍糸と精緻な刺繍で表している。また雲の表現は、やはり当時の風俗屏風を参考にしたものか、絵画の蕫すやり霞﨟の表現と友禅染でおなじみの糊置きの蕫引き霞﨟の表現が合体しており、装飾的である。
 この小袖は、風景模様の中でも「白地八橋に流水沢瀉模様単衣」(当館蔵)のようなおおらかな雰囲気とは違い、「四季耕作風景模様小袖」(東京国立博物館蔵)と同様に、風景に写実感が加わり一つの物語がくり広げられているデザインといえる。

( N.O. / K.M. )

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