梅樹円窓模様小袖

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梅樹円窓模様小袖

 

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時代     江戸時代 18世紀


 

寸法     143.6cm  59.4cm


 

生地・技法  淡紫縮緬地 友禅染・刺繍


 

 

円窓のある塀と雲が、梅の古木でデザインされた小袖。力強い面と線、色数の少ない色挿し、粒が大きい摺匹田などの技法は初期の友禅染の特徴を示す。


 

 雲がかかる大きく斜めに配された円窓のある塀と、梅の古木がデザインされた小袖。主に糊置きによって白上げされた面と線が太く力強い。花は色挿しの色数が少なく、暈かしを加えないものと、粒が大きい摺匹田で表されており、初期の友禅染の様相を示している。また、金糸と平糸の刺繍が平明な友禅染に華やかさをそえている。すでに指摘されているように、この小袖は『小倉山百首雛形中巻』(貞享五年[一六八八]刊行)所載の雛形図をもとに染色されたものであろう。雛形図には、「ひとはいさ心もしらずふるさとは 花ぞ昔の香ににほひける」(『古今和歌集』巻一)を想起させる梅を中心とした風物に「古」「里」「昔」の文字が配されているが、現状の小袖には文字が省かれているように見える。しかし詳細に見てゆくと、別裂で梅花の形を作り、背縫いを渡ってアップリケし、その周囲に刺繍を加えた箇所が認められる。別裂の下のオリジナルの身頃は切り抜かれており、いつの時代かに、文字部分を消し去る加工が行われたことが推測される。さらに身丈を裾で詰めており、これらの加工によってデザインの印象が変わり、梅花が誇張された感じを与えるのであろう。
 小袖の着用者が代わり、デザインの変更が加えられ、長く大切に伝えられてきたという経緯を想像させる一領である。

( N.O. / K.M. )

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