石畳鷹楓文字模様小袖

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石畳鷹楓文字模様小袖

 

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時代     江戸時代 18世紀


 

寸法     140.0cm  62.5cm


 

生地・技法  白縮緬地 友禅染・刺繍


 

 

石畳模様と、細密な友禅染による鷹楓模様が腰替り風にデザインされた小袖。伊達紋風の刺繍には「若鷹」「舞鷹」「紅鷹」「紫鷹」「黄鷹」とある。石畳模様の小袖は『戦国武家風俗図』の「犬追物」(1635)にすでに見られるが、本作にはさらに遊里にまつわる江戸の男性の遊び心も表わされ一層興味深い。


 

 腰から上に石畳を配し、下には鷹狩をデザインした対比の斬新な腰替わり模様の小袖。紅葉した楓と滝に彩られた渓間に羽を休める鷹を、精巧な糸目糊と繊細な色挿しで表して、友禅染の特徴を余すところなく発揮した小袖である。江戸時代中期の友禅染の完成度の高さをうかがうことができる。鷹の足結いの紐が紅糸で刺繍されており、友禅染の色挿しに用いることのできない紅色が糸で加えられて華やかさを増す。このような腰替わり模様小袖には「賀茂競馬模様小袖」(京都国立博物館蔵)があり、このデザインを掲載した雛形本が遺っていることから、江戸時代中期頃に流行したことが知られる。背面三カ所・前面二カ所に、伊達紋風に金糸と萌葱糸の文字の刺繍「若鷹」「舞鷹」「紅鷹」「紫鷹」「黄鷹」が配されていることについて、江戸時代には鷹が夜鷹を意味するところから、以前より、これらの文字はそれぞれ「わかったか」「まいったか」「こうたか」「したか」「きいたか」を表したものではないかとの指摘がなされている。また近年では、遊里にまつわる駄洒落的な意味を含んだ男性着用の小袖であったのではないかともいわれている。

( N.O. / K.M. )

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