橘竹模様振袖

たちばなたけもようふりそで


橘竹模様振袖

 

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時代     江戸時代 18世紀


 

寸法     160.0cm  64.3cm


 

生地・技法  白綸子地 絞り染・摺匹田・刺繍


 

 

右裾から枝を伸ばした橘の立木と、竹の円弧を大きく配した振袖。このような立木の配置は、江戸時代中期頃に刊行された小袖模様雛形本にも多く見られる。


 

 右裾から思い思いに枝を伸ばした橘の立木と、竹の円弧を大きくリズミカルに配した振袖。技法は、橘は摺匹田と刺繍、竹は絞り染と金糸の縁取り、さらに円弧内には杢目絞りを充填する。下前身頃裾の竹模様に、絞り染に使われた麻糸が数ミリ残っており、杢目絞りの部分と藍色の竹の部分について、複雑な絞り染の工程が推測できる。橘と竹は、瑞祥を表す模様の代表である。橘は常世の国の木の実の樹として珍重され、古く奈良時代には高位の人々が庭に植えて観賞し、光明皇后の母橘夫人が愛好したと伝えられている。竹は「いまはむかし、たけとりの翁といふものありけり。野山にまじりて竹をとりりつつ、よろづのことにつかひけり。……」ではじまる『竹取物語』に代表されるように、神の憑代として神事にかかせないものである。江戸時代には、松梅などとともに吉祥模様として大いに愛好された。幹をくねらせながら右裾から右腰そして両袖へと枝を伸ばす配置は、江戸時代中期頃に刊行された小袖模様雛形本にも多く見られ、この振袖もその頃の作品と考えられる。

( N.O. / K.M. )

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