梅樹扇模様帷子

ばいじゅおうぎもようかたびら


梅樹扇模様帷子

 

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時代     江戸時代 18世紀


 

寸法     150.0cm  58.0cm


 

生地・技法  黒荢麻地 絞り染・打出し鹿子・刺繍


 

 

梅樹に大柄な扇を添えた小袖。デザインは、全体に模様を散りばめる様式への移行期となる江戸時代中期頃の特徴を示す。絞り染めと打ち出し鹿の子による平明な梅樹に、立体感と躍動感のある刺繍扇をあわせて、華やかさを演出している。


 

 左裾から幹をくねらせながら立ち上がる梅樹と、大柄な扇がリズミカルに配された帷子。染法は、縫い絞りによる白上げとし、梅の幹は藍色の打ち出し鹿の子、花は紅糸と金糸の刺繍、扇は紅色の打ち出し鹿の子と金糸の駒繍で表している。幹や扇の輪郭は、絞り染の染め足を黒の色挿しで後から整えている。仕立て方は、裾が撚りぐけであること、縫い代の断ち目の箇所が袋縫いであること、袂の丸みの作り方も糸で括る形式であることなど古様を示している。扇は別名末広と呼ばれ、その形から発展拡大を意味する縁起のよいものとして親しまれてきた。梅は寒中にりりしく咲く高潔な花として、常緑の松、雪に堪える竹とともに歳寒三友の友とした中国に倣って、わが国でも吉祥模様の筆頭にあげられ、さまざまな工芸品のモチーフとして愛好されてきた。
 この帷子のデザインは、動的で大柄な模様ながら左腰部分の余白が少なく、寛文小袖から全体模様へ移行する時期の作であることを思わせる。また技法は、絞り染で染め分けがなされ、平面的になりがちな染めに、刺繍で立体感と華やかさを加えており、江戸時代中期前半の様相を示すものと考えられる。

( N.O. / K.M. )

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