蝶捻花模様小袖

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蝶捻花模様小袖

 

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時代     江戸時代 17世紀


 

寸法     150.7cm  69.0cm


 

生地・技法  黒綸子地 絞り染・摺箔


 

 

江戸時代の前衛的な美意識を表象する寛文小袖の一つ。辻が花染などに見られた模様と技法を継承しながらも、背面に大胆に配した揚羽蝶と捻花模様のデザインは、まさに「傾く」ファッションの最先端を行く。どのような人物が所用したのか。スタイリッシュに着こなし、見る人をを惹きつけたことであろう。


 

 背面の腰上に大きく揚羽蝶を、右裾に捻花模様を配した小袖。地色と模様部分の黒には、紅の下染が見られ、深みのある黒地となっている。染法は、絞り染と小粒の鹿の子絞りが用いられており、モチーフの輪郭にそって金の摺箔による縁取りが見られる。蝶の足や羽根の斑点、捻花の花びらの重なりなど、絞り染の技法を活かしたデザインとなっている。「寛文美人図」(遠山記念館蔵)は、この小袖の着用姿を想像させ興味深い。大柄で大胆なデザインは、前代の抽象的な染め分けの中をモチーフで充填する慶長模様が区画整理され、その染め分けの形が大きな蝶や捻花に変化したものと考えられがちであるが、むしろ桃山時代の辻が花染などの散らし模様の系統を受け継ぐものと考えたい。なお、蝶は鎌倉・室町時代頃から再生や不死の象徴と考えられ、武家の直垂や武具のモチーフとして好まれたといわれる。

( N.O. / K.M. )

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