色紙短冊草花模様小袖

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色紙短冊草花模様小袖

 

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時代     江戸時代 19世紀


 

寸法     157.0cm  62.3cm


 

生地・技法  黒綸子地 絞り染・刺繍・摺箔


 

 

四季の草花に短冊・色紙を添え奥行きある空間を見せる小袖。紅葉・桔梗・菖蒲・梅・椿の優美な刺繍からは、絵画のような印象を受ける。縫い締め絞り・鹿の子・摺箔による色紙・短冊は風雅で知的な雰囲気を醸し出す。江戸時代後期の落ち着いた町人文化を感じさせる。


 

 色紙や短冊に描かれた草花・風景画が、その画面から黒地の広い空間へ飛び出して、生き生きとした存在感を示しているデザインの小袖。色紙や短冊を絞り染により白上げとし、鹿の子絞り・金の砂子箔をそえて華やかさを加え、草花・浪に千鳥は刺繍で表している。植物は、椿・萩・菊・桔梗・竹・れんげ草・しのぶであり、一枚の色紙のみ浪に千鳥である。刺繍は平糸を用い、平繍の花弁の一枚、割繍の葉や刺し繍の葉脈の一筋にまで植物を的確に表現した繍技が光り、刺繍した人の息づかいまでもが伝わってくるようである。色紙・短冊散らし模様にとどまらず、料紙と草花のそれぞれに遠近感を感じさせるデザインを、刺繍技術が引き立てている。まさに、デザインと技法が手を取り合い、相乗効果を上げている例であろう。
 この小袖は、三井家伝来の衣裳類にある「紺地竹尽し模様打掛」(文化学園服飾博物館蔵)に代表される、円山派の下絵を刺繍で表現した小袖や打掛などとデザインや技法の類似点が多く、文化・文政期のものと指摘されている。

( N.O. / K.M. )

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