美術はそれを生み出した文化に基づき、文化は風土や人々の生活に因ります。美術の理解にはその文化を理解することが必要不可欠で、文化を理解するためには風土や生活の理解が欠かせません。本専攻では日本国内から海外まで実際に現地を訪れて、美術をその背景から理解します。研修では地域の祭事から西洋の地方都市まで幅広く訪れ、人々の生活に触れながら実際に身をもって学んでいきます。
多様化するアート・シーンの最新の理論に触れ、議論を重ね、実践しながら、自身の考えや活動を磨いていくためのゼミです。静的な知識や論述だけにとどまらず、動的な経験や実践を重視し、教員とともに探求していきます。(担当教員 杉田 敦)
色と色との関係に調和を見出す感覚は、古代ギリシャより存在し、美の概念の根本をなすもののひとつです。「どのような色同士に調和・不調和を感じるか」だけでなく、「どのような心の働きで調和を感じるのか」といった原点をも含め学びます。(担当教員 坂田 勝亮)
美術作品を言葉に“翻訳”する作業を通して、作品の成り立ちをあきらかにしてゆくレッスンです。何がどのように表現されているかに目を凝らし、それを自分の言葉で書き取ってゆくなかで、観察力と理解力を育みます。(担当教員 北澤 憲昭)
色を見ると言うことは人間にとって最も重要な情報であり、人間は色の情報から形や奥行き、動きなどを知覚することができます。このためこれまでの人間の歴史・文化においては、洋の東西を問わず太古の昔から色は大変重要な役割を担ってきました。これらの色の見え方・使い方は、人間本来の存在を示す重要な証拠です。色の見え方、使い方から人間の姿を理解することがここでの目的です。
日本の近代美術は二つの焦点をもつ楕円としてイメージできます。ひとつは「美術」というジャンル、いまひとつは「リアリズム」です。これら二つの焦点は、近代西洋からもたらされたのですが、時を経るにしたがって日本社会の在り方に従って変容してゆきました。ぼくの研究の第一課題は、その変容のプロセスを、美術館や美術学校などの制度を通じて研究することです。
現代の最先端のアートは、ものをつくるだけではありません。展覧会の企画やアート・プロジェクト、ワークショップはもちろん、ディスカッションや人間相互の関係の構築、思想や教育の在り方そのものまでがアートになり始めています。そんな現代アートを支える理論を探究しながら、ときに自分たちで実践してみること。理論と実践を共に大切にしながら、アートの新しい地平を切り拓いていく、それが芸術表象のテーマです。
芸術に関わる人にとって、著作権トラブル、意匠権の取得、ギャラリー・企業との契約など、法的な問題に直面する機会は増えています。授業では、このような問題の実践的な解決法の習得を目指します。また、多くの人々が心豊かな生活を送る上で、芸術の果たす役割が重視されています。アーティストと地域社会・国家との関係をとらえ直し、より多くの人が芸術と関わり合えるようなルール(法)について事例研究を通じて考えて行きます。
グローバル社会では、異文化理解の前提として自国の文化を知る必要があります。近年、仏像に代表される日本の仏教美術はますます評価が高まっており、また江戸時代の浮世絵など風俗画や伊藤若冲ら奇想の画家の斬新な作品は、今もまったく古さを感じさせません。皆さんには日本美術の良さを理解し、それを生み出した背景等に興味をもって勉強に臨んで欲しいですね。
美術史は机上で画集を繰ったり本を読んだりすることだけで学べるものではありません。太陽のもと山を登り谷を下り川を渡り、失われた古代ギリシア都市を探すこともそうなのです。もともと西欧では18世紀にヴィンケルマンが確立したギリシア彫刻の研究から考古学が生まれました。美術史をアウトドアで勉強する方法は「道の学」です。古代に記された文献から失われた都市の建築を発掘せずに割り出すことは大変スリリングです。
人類の築いてきた営みを芸術として評価する試み、それが芸術人類学である。ラスコーの洞窟壁画など数万年前に遡る「芸術」も存在するが、その大半は無名の人々の生活文化のなかで生み出されてきたものである。シャーマンによる信仰的な儀礼、カーニバルの仮面、食事用のスプーン、手編みのセーター、そうした事象、事物一つひとつが芸術人類学の対象を構成する。それを発見する旅、それがここでの醍醐味である。