制作の記録[2007年]

松本歯科大学病院ヒーリング・アートプロジェクト

松本歯科大学病院 長野県塩尻市広丘郷原1780

プロジェクトの概要

2007年4月、松本歯科大学の院長から、建設中の松本歯科大学病院新病院(2008年4月完成予定)の1階特診エリア(身体障害者の歯科治療エリア)、3階小児歯科エリア、矯正歯科エリアに設置するヒーリング・アート作品制作と、そのトータルコーディネイトの依頼を受ける。

2007年6月、大学、短期大学部、学科、専攻、学年の枠を超えて全学的にボランティアによる制作参加者を募り、プロジェクトチームを発足し、共同制作によって制作を進めていった。毎週一回、昼休みに集まり全体計画、作品の原画制作とその打ち合わせを進め、7月下旬から9月上旬の夏休み期間に原画制作、スキャニングからデジタルデータ化し、さらにデジタルプリントシート施工のサイズにデータを拡大して、12月に業者によるデジタルプリントシート作品施工を行った。

全体の統一テーマを「動物と自然」として、1階特診エリア待合室は「長野の山と緑の中の動物たち」、特診エリア受付側面の壁面は「動物たちのかくれんぼ」、3階小児歯科エリアのプレイルームは「吊り橋探検」、小児歯科歯みがきスペースは「動物たちの歯みがき」、小児歯科治療室入口ドアは「楽器を演奏する長野県の身近な動物たち」、という各テーマを設け、それに沿って楽しいデザインになるよう意図して制作した。また、3階矯正歯科エリアは、10代後半から40歳代くらいまでの幅広い年齢層の患者が治療する場所であるので、治療室入口ドアは落ち着いたデザインを心がけながら、「アフリカ サバンナの自然と動物たち」をテーマとして、エリア全体が広い地平線でひとつにつながった構図のデザインを考えた。

制作方法

  1. 病院におけるヒーリング・アートの設置は、医療空間の環境改善の一助になることを目的とし、アートによって利用者の安らぐ空間作りを目標に、全体計画を参加者全員で話し合い、グループによる共同制作を原則として制作を進めた。
  2. ガラス壁面や、ガラスのドアが多い新病院の空間の特性から作品は、デジタルプリントシートに出力した作品を施工することとした。イラストボードにコラージュ制作した原画をコンピュータ画像処理ソフトPhotoshopでデジタル加工し、デジタルプリントシートに出力する方法とコンピュータ描画ソフトillustratorでデジタル作品を作成する方法を採った。
  3. 作品のテーマは病院スタッフ、建築設計会社とも話し合い、特診空間、小児歯科空間、矯正歯科空間それぞれの特性と、治療対象者の特徴をよく検討して、それぞれの空間の統一性を図りながらデザイン計画を進めた。

透明ガラスに施工するデジタルプリントシートの視覚効果

デジタルプリント施工用シートには、不透明、半透明、透明な素材がいろいろとある。これらのシートの特性を使い分け、複数の種類を組み合わせたり、シートに画像データをカラー出力したり、また画像の形態に合わせてシートをカッティングすることで、様々な表現が可能になる。ガラス面の持つ透明感と光の透過性を活かし、例えば治療室のドアの場合、四季の季節の移り変わりや、朝夕の時間の変化による見え方の違い、治療室の中側と待合通路側の光線具合による内と外の色調の違いを作品効果に反映させるよう工夫した。

プロジェクト進行過程


2007年6月上旬 プロジェクトを発足 学内にて内容説明会開催
6月中旬 参加学生のグループ分け  メンバーの確認  統一テーマの話し合い
6月下旬 参加学生の原案作品(アイデアスケッチ)検討会
7月中旬 各グループ作品アイデアスケッチ発表会
7月下旬 原画検討会
7月25日(水)〜9月7日(金) コラージュ原画制作(B3イラストボード使用)
原画からデジタル化までの作業
11月1日〜11月2日 病院見学、現場での原画検討会
11月中旬〜12月上旬 デジタルデータを原寸拡大
12月23日〜12月24日 デジタルプリントシート作品を壁面、ガラス壁面、天井、各ドアに施工
   


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