本郷伝通院前・本伝通院付近の想出(男性・84歳)
春日通りをシビックセンターを通り越し、富坂を登ると伝通院前バス停がある。
こゝから右手に短いが大幅な道があり、その突当りに、徳川家康の生母於
大(おだい)の方や、豊臣秀頼の正室であった千姫、三代家光の正室孝子
等々の立派な墓塔が現存する伝通院がある。こゝを中心として次のバス停
春日二丁目(元都電々停では同心町)までの一帯を通稲伝通院前と呼んで
いた。私はこの地で大正十五年に生まれた。当時を偲び、現在と比べると、
罹災(りさい)と、その後の社会、経済事情の激変によるその変貌の甚だしさ
は唯々驚くばかりである。
絵:滝沢未那 人の思い出を通して、外でスケッチをするのは初めてだったので、新鮮でした。昔もここに変わらず人が通っていたのだと実感しました。