制作の記録[2007年]

茨城県立こども病院CTスキャナ検査室ヒーリング・アートプロジェクト

茨城県立こども病院 茨城県水戸市双葉台3-3-1

プロジェクトの概要

2006年11月から2007年2月にかけて茨城県立こども病院からの依頼により実施した、CT検査室におけるヒーリング・アートプロジェクトは、検査を受ける小児患者の立場になってみた時、どの様に検査室の空間を感じているのかを考えるよう努めながら、「海」をテーマに病院のシンボルキャラクターである「ラッコ」と海の仲間たちがいる世界を描いて空間演出をおこなった。制作を進めるに当たって、次の点に留意しながらプランニングを行った。

  1. 検査室に入った瞬間の緊張感をどう和らげるか。
  2. 検査台に上がった時の緊張感をどう和らげるか。
  3. ガラス窓越しに見える隣の操作室と医療スタッフの姿をどういった気持ちで眺めているのか。
  4. 検査台に乗って身体を固定されながら天井のどの箇所に視線がいくのか。また天井をどういった気持ちで眺めているのか。
  5. CTスキャナが作動している間どこに視点が向くのか。またどういった気持ちで検査を受けているのか。
  6. 検査が済み、出口に向かう時の気持ちはどの様なものだろうか。またどこに視点が向くのか。

こういった点を考えながら、何度も実際に検査室の現場で入口からCTスキャナまでの動線を辿って往復し、更に検査台に上がった時の視線の位置を確認し、患者の動線と心理状態を想定した上で、どの位置にどの様なアートが必要かを検討し、空間の演出方法を考えてみた。そして小児患者が検査を受けるときの不安感を少しでも緩和出来るような空間にしていきたいという気持ちでプロジェクトを進めた。

潜水艦「おさかな号」の海中探検

CTスキャナ検査室の狭い密室空間には巨大な検査機器が置かれ、その機械音が響く中で検査台に寝て、身体をベルトで固定されるという状況は、小児患者に恐怖感を与えかねない。しかし、そこにアートを施すことによって場の雰囲気と空間イメージを変えることが出来るのではという考えの基に、入口から検査台に向かう床面をタラップに、検査台を潜水艦「お魚号」の操縦席、検査機器のドーム状の形態を潜水艦の操縦室に見立て、また、検査室の空間全体に海中の世界を演出し、海中探検に出発するようなイメージ空間の企画を立案し、構想を練った。

このイメージに基づいて、色鉛筆で描いた作品をデータ化し、それをデジタルプリントグラフィックスにして施工することで、潜水艦「おさかな号」の海中探検の世界を表現し、2007年2月25日完成した。



まえへ インデックス つぎへ