タイトル「障害理解とアートフィールド参画支援の取組」

海外視察:abcd ラ・ギャルリ


参加人数:
大学教員4人

参加者:
小川正明(絵画・教授)、吉武研司(絵画・教授)、横山純子(情報デザイン・助教)、木下道子(教育研究推進役)

活動日時:
2010年3月18日(木)~3月25日(木)

活動の場所:
abcd ラ・ギャルリー/コレクションabcd パリ
abcd la galerie-collection abcd,Paris
12 rue Voltaire 93100 Montreuil sous Bois,France
TEL:+33-(0)6-22-26-70-56
http://www.abcd-artbrut.org

担当者の感想:
女子美術大学短期大学部教授 吉武研司

パリの東に位置するモントルイユの住宅街にあるabcdギャラリー、普通の住宅街のアパートのようなところにあった。扉が開くと、木のかけらのようなオブジェが暗がりの中にあって、何やらエロティックでエネルギーを感じる魅力的な作品だった。いきなり目が釘付けになってしまった。
 気さくな明るい印象のオーナーのブルノ・デシャルムさんが収集しているアール・ブリュットの作品は、デュビュッフェが集めたローザンヌのコレクションとは少し趣が異なっている。アドルフ・ヴェルフリ、ヘンリー・ダーガー、ヤンコ・ドムシッチ、ジーン・メリット、アナ・ゼマンコヴァ、ミシェル・ネジャー、ビル・トレイラー…、彼らの作品は色濃く、とてつもない魅力が充満している。すでに高い評価を受けている作家から、新しく見出される作家まで、多くの作品が収集され、約2000点の作品が年2回の企画展において展示されている。
 映像作家であり、現在もアール・ブリュットに関係した映像作品を制作している彼は、「アール・ブリュットの見せ方は展覧会の数だけある」と言う。1999年にアール・ブリュットの研究と普及を目的とした非営利団体abcd協会を設立し、活動を続けている立場から、アール・ブリュットの定義は難しいと感じているそうだ。美術史、哲学、精神分析、心理学の専門家が集まり、研究活動を行っている。ヨーロッパの人々の作品だけでなく、ロシア、南米、日本の人々の作品も収集されている。
 「デュビュッフェがアール・ブリュットという言葉を考案してから60年も経っているからね」という彼の言葉に、我々も日本人として、また女子美術大学で美術を研究・指導する立場として、障がいのある方々のアートとのかかわり方を自分たちで模索しなければならないということに気づかされた。それは、定義であり、収集の視点であり、見せ方でもある。それぞれ異なる専門分野を持つ教員同士の議論を重ねると同時に、学生たちがどのように感じ、どのような支援の方法があるのかを考えていかなければならないだろう。