タイトル「障害理解とアートフィールド参画支援の取組」

具体的な内容と実施体制


履修プロセスは、<図4>の通り、学生による障がい者の「アートフィールド創出プログラム」というコンセプトに基づき、各コースを超えた、アート&デザインの学生達の《実践的フィールド》の構築を基本目的として編成されます。平成21年度より試行、22年度よりカリキュラムに位置付ける「コア科目」と教養基礎理論・関連演習科目に加え、各コース専門科目を主体に学生が活動するチーム実践型、PBL型学習等によって構成されます。これにより、授業+授業外の現地での実践的学習時間が確保され単位の実質化が行われます。

 

①コア科目

教育課程開発から「サービス・ラーニング」等の形態をとり「社会福祉学」に加え、「共通プログラムⅠ・Ⅱ」等のコア科目を各コース科目から短大必修科目に位置付け、さらに平成23年度には「芸術福祉論」の開設を準備します。

 

②実践型プログラム

講義、演習に加え、ワークショップ、コラボレーション、プロジェクト等表現そのものを主軸とする実践型教育を行います。学生達が主体となり取組むプロジェクト活動は、冊子制作、アートドキュメント(学習実績記録等)により検証されます。
カリキュラムの核であるコア科目の「社会福祉学」は、共通基礎科目の位置付けであり、学生はどのコースからも履修できます。座学として実践するのに留まらず、学生達は自らの発意により独自のプランを携えて地域や障がい者施設でのフィールドワークを実践します。実社会に交わることで社会性を獲得し、地域や社会への理解を深めると同時にその課題を知り、障がい者の作品そのものをアートフィールド創出により一般に公開し、さらに<アーティストフィールド>進出へのアウトリーチを行うことで、自らの成長を確認します。

図 障害理解によるアートフィールド創出

【取組の実施体制…地域等との協働連携】

本申請プロジェクトでは、本学が国内外の地域、NGO、NPO、福祉、医療、教育機関等と協働連携することが前提となっています。学生達が自主参加するプログラムについて、プロジェクト審査し1件につき年間30万円~100万円迄短期大学部が助成します。各コースが芸術学部、大学院とも連携して、その仕組を教育研究活動の柱に据え、今後2年間の実践計画、具体的プランとして推進する学内合意を取り、学長の意思に基づき実施体制を構築しています。現在の協働連携は、国内外の大学、研究機関との連携に加え、杉並区、杉並区内障がい者支援施設、日本チャリティ協会、卒業生の主宰する工房、美術学校等であり、今後は福祉系、医療系大学、東京都、厚生労働省、文部科学省等の機関を予定しています。

 

【取組の独創性又は新規性】

従来のアートフィールドでは、既成のアートに限界を見たことから、障がい者の描き出す内面の世界に、創造性のパワーやジャンルを拡大する可能性、アートを変える力を見ようとして来ました。アートの世界では一方的に刺激を受ける材料として作品を見ていました。
しかし、本取組はアートの実践者である学生が、障がい者をサポートして、力を与えることにアプローチする教育プログラムです。また、従来型の絵やデザインを上手に描けることを学ぶことが目的ではなく、学生の実践型学習として、障がい者とのコミュニケーションによる、アートやデザインの力を用いた学生自身の気付き、その振り返りによる、①問題の発見力②統合力③問題解決に向けた応用力④教育力・学習力(障がい者と学生、或いは学生同士のピアサポート⇒教え学び合う力)を養成する取組でもあります。
具体的に、学生達の各種プロジェクト活動を基に、障害理解とアートフィールド参画をテーマとした教科書(書籍)制作を行います。それにより、美術大学による障がい者アウトリーチの教育プログラムとして知識・ノウハウを提供することが可能となります。特別支援学校を含む教育機関での教材となり、障がい者を含む親と子のコミュニケーションのツール作成の可能性を開きます。そして、障がい者の制作の力により、アート&デザインが新たな命を与える過程をもつことを学び、何よりも学生は描くことの楽しさを再発見できます。地域や他大学との連携により福祉や医療等の異分野の発想が取り込まれることで、制作活動が活性化して作品の独創性を生みます。学生自らの自主性が誠実な社会的態度を生み、真摯な作品づくりに繋がる新規性を帯びた取組となります。