タイトル「障害理解とアートフィールド参画支援の取組」

2009 アジアパラアートTOKYO


担当者名
木下道子(教育研究推進役)

活動日時
スケジュール
2009年1月〜2009年10月26日
2009年4月〜8月:シンボルマーク・ポスター・表紙デザイン・カタログデザイン
2009年8月:作品審査・撮影・準備
2009年9月11日〜16日:池袋西武ギャラリー(日本テャリティー協会)
2009年9月19日〜10月3日:女子美杉並校舎 学食、カフェテリア
2009年10月15日〜10月25日女子美相模原校舎 ロビー

参加者人数
大学教員12人、職員3人、大学院生2名、学生2名、短大生30人、卒業生3人、一般5,000人

参加者名(所属、役職)
佐野ぬい(学長)、小倉文子(ファッション造形・教授・芸術学部長)、小川正明(短大部長・絵画・教授)、弘中雅子(絵画・教員)、小林信恵(学生部長・テキスタイル・教授)、佐藤真澄(デザイン・准教授)、横山純子(デザイン・助教)、絵画研究室助手、情報空間研究室助手、テキスタイル研究室助手 

活動の目的
障がい者のアートには生きる力を感じるものが多く力強さを感じていた。
今回のパラアート展の参加意図としては、女性の美術の大学である我が大学で障害という言葉をどのように受け止めるかという問題もあったが、障害の有る無しに関わらず、作家自身の表現の豊かさを共有できるきっかけではないかとの思いで、学生ができる事から協力をしていくこととした。また、本展では表彰式や、シンポジュームが行われた。女子美では3つのワークショップを行った。広報的な意味合いもあり、また、女性の学校として取り上げていく事の重要性も鑑みての意思決定でもある。ポスターとシンボルマークについては参加者全員の作品をワークショップ会場に展示した。
1)パラアートのシンボルマークを公募、ポスター、表紙デザインは授業の中で提案、カタログは有志により作成。
2)作品管理:アジア、国内から集まった作品を開梱、撮影、展示、梱包、配送準備等を行なう事により、作品管理の大切さと一筆づつ丁寧に描かれた作家達のエネルギーを直に感じる事ができ、裏に書かれた作家一人ずつの思いを汲み取れる良い機会となり、障害理解への一歩を踏み出した感がする。
3)ワークショップ:弘中雅子先生・楽しく絵を描こう!
          :水谷さるころさん・カラーペンで楽しいイラスト画
          :小川正明先生・スチレン版画
          :川口吾妻先生・タッチパネル3台

教職員の役割としては、パラアート展の補助という事で、審査委員や展覧会中のワークショップ、学生支援などをする事で、学校全体で取り組む姿勢を内外に示す事ができた。また、大事な事は女子美術大学の学生、生徒、教職員に作品を観る機会をつくる事であり、178点のうち半数を杉並校舎と相模原校舎で巡回展をする機会を得た。後から聞いてみると、障害という事は意識せずに見ていた方々がいて、そのような方が描かれた者だと言う事が分かり、特に学生は、もっと私たちも勉強をしないといけませんねと言うコメントをいただきました。障害の有無は何も関係もない事をお互いが実感した瞬間でした。

活動の場所
杉並校舎・相模原校舎・池袋西武ギャラリー

活動内容
杉並校舎
シンボルマーク、ポスター、表紙デザイン、カタログ、作品管理、撮影、作品審査、パラアート展会議、巡回展
相模原校舎
巡回展、障がい者によるワークショップ
池袋西武ギャラリー
展覧会、シンポジューム、表彰式、
ワークショップ

学生が得られた成果
学生に取っては、普段目にする機会の少ない作品を目のあたりにする機会を得た事、デザインに関わった学生達は授業の中での作品制作はあるところでは自己表現の場になっている事が多いが、今回は、他者の立場に立ってデザインをしていくという視点がはっきりとした制作となり、それだけ評価も厳しかったが、挑戦するという姿勢は前向きであり今後もチャンスを生かしてほしい。展覧会に参加した学生は、直接目にする事ができ、その筆使いが手に取るように分かり、それぞれの障害により、着目点の違いや、表現、描材のこだわり等一つ一つ参考になった。障がい者によるワークショップは相模原へ富士山を描いてパラアート展に出品している作家さんを招いた。親御さんにはお子さんとともに過ごしたなかで、親でなければ分かり得ない子どもにどのようなきっかけでアートと遭遇したのか、その体験を通して資料を御持ち頂き出会った先生方との話をうかがった。そこには学生も参加した。障害のあるお子さんには得意なバルーンアートを女子美祭の会場の中で展開していただいた。学生も一緒にバルーンアートを習ったのですが、なかなかうまくいかず、何度も待ってもらい教えていただきました。あまり手こずっていると先に進んで、その作品は、お子さんに差し上げたりし、また私たちのところに戻って来て教えてくれるという、普段では考えられない光景に遭遇知る事ができました。

今後の課題、計画、可能性など
課題:
課題は山ほどで、障害についてどのように考えるかという事が先ず1点です。バリアフリーでなければならないアートの世界にも拘らず、どうしてもどこかくくりたくなります。くくる事によって受け取る側の立ち位置をはっきりさせる事になります。分かりやすくなります。女子美が今後どの方向を示すかは、多少先の事になると思うが、先ず、障がい者アートの現状を知る事から初めて行く事で、女子美術大学がこの世紀で立ち向かわなかればならない課題を見いだす事ができるであろうと多少楽観視している。
計画:
杉並区に位置する事で、先ずは、近隣の学校や作業所、NPO法人の現状を知り、学校として何ができるかを考え行動する事から始めていく。また、パラアート展に協力をした事で次につなげる事ができるのかどうかを検討していく事。次に、国内の現状把握。その先に海外事情がある。
可能性:
可能性とは、未知なるものへの挑戦でもあるが、動いてみる事により、道はおのずと思う。先ず、計画を実行する事が大きな可能性を実際のモノにする近道と考える。

先方からのコメント、感想
(1) パラアート展に関しては、主催者側からは学校力を評価していただき、全面的な協力に対しての感謝を受けている。次回の要請もきている。
(2) 池袋で4つのワークショップは、来場された多くの一般の方々からも好評で、障害の有る無しに関わらず多くの方の参加を得た。特に、障害のある方々の初めての経験であった版画やタッチパネルに対しての素直な反応が印象的で、何度も何度も挑戦をしていた。豊島区長もタッチパネルには関心が高く、熱心に質問をしていた。
(3) 相模原巡回展では、作家の親御さんが訪れ、池袋会場とは違ったギャラリーでの展示に満足をされ、作品に対する意識の違いを述べていました。池袋では、あまりに多いせいか素通りする方や、関係のところだけを見る人が多かったが、学校では何度も色々な場所に足を運び丁寧に作品を観てくださり、来場する客層の質の良さを感じたと、言ってました。また、一点一点ライトを当ててくださり、一つ一つの作品が丁寧に扱われている事にも学校のギャラリーで開催された意味を感じたとの良い評価をいただきました。

担当者の感想、印象、思い出に残ること、コメント、評価
今回のパラアート展はその事自体の評価についても賛否ありましたが、女性にとって生涯の中で様々な障害(身直なところでは老人介護の場、精神障害、知的障害、身体障害)を色々な場所で関わる事が多い立場にある現実があるのではないかと常日頃感じていて、障害という事自体を知る事から初めても良いのではないかとの思いもあり、相手の熱心さもあり、協力する事とした。女子美術大学でも、同窓会を中心とした活動の中で絵画教室や作業所、NPO法人などでアートを通してその指導的役割を担っている方々の話を聞く事が多い。学校で多少関わる事で、学生時代から見聞を広めているという事は、将来その場面に遭遇した時に自然に手を差し伸べる事ができる事に繋がっていくであろうという、循環型社会を想定しての事である。自然に障害という事と隣り合わせているという感覚を持ってもらいたいからである。

写真 展示準備 写真 展示準備 写真 相模原会場展示
展示準備 展示準備 相模原展示会会場
写真 相模原会場展示
相模原展示会会場