タイトル「障害理解とアートフィールド参画支援の取組」

たんぽぽの家


担当者名
木下道子(教育研究推進役)

参加者:
小川正明(短大部長、絵画・教授)、新藤豊久(教育研究事業部部長・職員)、赤木恵里(教育研究事業推進室・アシスタント)

活動日時
2010年2月16日

活動の目的
教育事業における障害理解のため、障がい者アートに取り組む工房・施設を視察訪問する。

活動の場所
たんぽぽの家 アートセンターHANA
奈良県奈良市六条西 3-25-4
TEL: 0742-43-7055
最寄駅:近鉄橿原線「西ノ京」駅からバスと徒歩で20分
http://popo.or.jp/

施設について
「たんぽぽの家」は1980年奈良県内で初めてつくられた民間障がい者施設であり、前身は1973年に養護学校卒業後の子どもたちに生きがいと自立の家をつくろうと発足した「奈良たんぽぽの会」である。現在は「社会福祉法人わたぼうしの会」「財団法人たんぽぽの会」「奈良たんぽぽの会」の3つの組織からなり「やさしさ」を活動の基調とし、文化と夢のある社会づくりに取り組んでいる。
「たんぽぽの家」は多彩なアートプロジェクトを実施し、ソーシャル・インクルージョンをテーマにアートの社会的意義や市民文化について問いかける事業を実施している。
「わたぼうしの会」は障がい者、子供、高齢者が地域で安心して生きていけるという視点で社会福祉サービスを提供している。
「たんぽぽの会」は「たんぽぽの家」を支えるボランティア団体である。チャリティーバザーやコンサートでグループを支援している。
そこには、着実に組織を構成してきた30年の歴史が感じられる。

たんぽぽの家の敷地には、アートセンターHANA・わたぼうしの家・シアターポポ・福祉ホーム コットンハウスがある。
アートセンターHANAは、すべての人がアートを通じて自由に自分を表現したり、互いの感性を交感することができる、地域に開かれた場。障害のある人が個性をいかしながら 造形活動やパフォーミングアーツに取組むスタジオ、今を生きる人たちの表現を紹介するギャラリー、コミュニケーションの場としてのカフェ&ショップ、アー トの可能性についてさまざまな議論と探求を行うためのインフォメーションセンターやミーティングルームがある。
(ウェブサイトより抜粋)http://popo.or.jp/

見学コース
アートコース(アートワークショップ、エイブル・アートの活動の説明を聞き、ギャラリーなどを中心に見学)
女子美術大学で芸術学科非常勤講師もされている柴崎由美子さんに案内していただいた。

得られた成果
たんぽぽの家を見学することで、アートとケアの実際の現場で、障害のある方がアートを仕事とし、自立した生活をしているということを知ることができた。そのアート作品を地域や企業へ発信する活動を日本各地で拡げてゆき、作品を流通し、システム化していくことで、新しいビジネスとしての支援のあり方もみえてくる。このことは、作家をめざす学生にとって、作品のその後を考える上で有効な機会になるといえる。

施設の印象
「たんぽぽの家」は、近鉄西ノ京駅から車で10分程の位置にある。施設は大きく4つに分かれている。一番新しいアートセンターHANAのミーティングルームでその沿革や現在の取組等を聞いた。施設利用者は通って来る人と、施設内の福祉ホームコットンハウスで生活する人がいる。コットンハウスはバリアフリーの個室で、車いすの入居者も生活しやすく設計されている。
HANAは一階にスタジオを中心にカフェ、ギャラリー、ショップが置かれ、二階にはそれぞれの法人事務所、インフォメーションセンター、ミーティングルームが置かれている。近代的で明るい造りでスペースにも余裕がある。センターには数台のPCが置かれ、障害のある人たちが会計業務等にも携わっている。
スタジオには2つのアトリエ、手織創作室、陶芸室がある。アトリエでは思い思いに絵画や立体造形物を制作し、人気のある手織創作室では10数台の織機に向かいストールやチョッキを制作していた。陶芸室では主に人気商品、厄除け鬼を制作している。それぞれのアトリエでは、3月のアートフェアに向けて制作に熱が入っていた。
制作された商品はギャラリーで展示販売され、施設の大きな収入源になっている。

見学コースでは、たんぽぽの家が、今日に至るまでの活動の歴史などのお話を聞き、制作工房へと向かう。障害のある方たちが、絵画、織、染、陶芸など多様なプログラムに取り組み、販売やカフェの仕事も一日の中で個々の能力にあわせてローテションを組んだりしている。また、見学者に案内をする仕事もあり、皆生き生きと仕事をしていた。そこでの工房を紹介する時の嬉しそうに語る姿が今でも思い出される。また、福祉ホーム コットンハウスでは、入居者の方に部屋をご好意により見学させていただいた。車椅子の生活をする、その人に合わせた部屋のつくりになっていて、介護スタッフも近くにいる環境にある。家賃や好きな旅行のお金も自分の給料からやりくりしているというお話を聞き、自立した生活をしている姿がたくましく見えた。
表現をすることと生活が共にある。これを支える環境と各団体・事業ネットワークや新しいシステムづくりの継続による、活動の成果がここで活動している障害のある方たちをはじめ多くの人々に笑顔を増やしているようだ