タイトル「障害理解とアートフィールド参画支援の取組」

HANGAプロジェクト


活動の目的:
アメリカ・ニューメキシコ州にあるニューメキシコ大学(UNM)で版画を教えている島野芳子先生と本学の八木なぎさ先生との交流が発端となって、版画という媒体を通して、 日本とアメリカの学生、ハンディのある方々 とのコラボレーションで作品を制作するという計画がスタート。
UNMでは、大学と同じ地域にある様々なハンディキャップのある人達の施設を訪れて、施設の人達と学生が版画の共同制作をする授業を行っている。版画という媒 体を上手に使うことで、必要以上にコミュニ ケーションを意識しなくても自然な形で作業 を行うことができるようにとの指導が行き渡っている。
本校の関係では、障害者施設・鹿児島の「工房しょうぶ」より版木と紙すき和紙の提供と、杉並区の施設「杉並いずみ第二方南」のメンバーの方々の協力で成り立っている。最終的には、互いの作品を展示するまでに至っている。

この取組を通して自分とアートとの関わりや、自分と社会との関わり、アートを通して自分が目指すべき方向などを探り、考える事が大きな目的である。杉並地域の障がいのある人達との版画の共同制作を通して、アメリカのニューメキシコ大学の学生と交流を行う。

活動日程:
2010年4月〜2011年1月

参加者:
学生20名 教職員5名

活動内容:
1, 説明会 
学生に向けて説明会を行い、授業の沿革を資料を使いながら説明した。交換制作のためにUNMから送られてきた版や刷った作品、杉並でのワークショップで共同制作する「スチレン版画」と「厚紙のドライポイント」の参考作品を提示しながら、授業の中で行う作業の内容と全体の流れを確認する。

2,デモンストレーション(作業の練習)
作業所(杉並)で行うワークショップのメニューを学生と実習し、作業の仕方や注意事項を確認する。これは版画を専門に勉強している学生が対象ではないので、学生達も初めて実習する作業が多く、この授業は必須と考え校内の版画工房で行った。

3,ワークショップ
杉並いずみ第二方南の作業所にて
作業所に伺ってのワークショップを行う。ワークショップは2日間行ったが、1日目にスチレン版画、2 日目に厚紙を使ったドライポイント制作とし、それぞれの作業内容の違いに混乱がないよう配慮した。

女子美にて
作業所の方々を女子美にお招きしてのワークショップを行う。女子美では版画工房を利用して版画用の専門的なプレス機を使い、高度な版画技法に挑戦する。工房での薬品の管理や道具の使用には注意を払い、作業の流れを考慮した作業スペース の形成を心がけた。薬品へのアレルギー対応もその一つである。

交換した版を刷る
女子美の学生達がUNMから送られて来た版を刷る授業を行う。それと同時に女子美のワークショップで制作したさまざまな版や、女子美の学内で集めた素材をUNMに送り、交換制作に使用してもらう。UNMから送られてきた作品は牛乳パック などを版材にしたドライポイントとコラグラフ(グリーティングカード)の版で、学生は異なった形式(技法)の版を刷る方法を実習しながら、それぞれの刷りを模索する。

カレンダー制作で共有を
女子美のワークショップで作った作品やUNMの版を学生達が刷った作品、UNMから交換した版を刷った作品など、このプロジェクトではたくさんの作品が生み出された。
それら一つ一つの作品はすべて鑑賞に堪えるレベルの自立した作品だが、このプロジェクトの主題としてきたものは作品を制作することだけではなく、地域の方々との協力や、我々の知らないところにいるさまざまな人々との版画を通しての交流であることを考え、このプロジェクトに参加したすべての人々で共有できるものとしてオリジナルの作品を直接貼ったカレンダーを作った。

学生の声
授業の中で勉強した銅版画やリトグラフの他にもこんなにいろいろな版画が身近にあるのにびっくりしました。またやりたい。
杉並いずみ第二作業所のワークショップでは始めどうしてよいのかわからなくて戸惑ったけど、作品を作り出すと作業所の人達みんなが迷い無く絵を描いたり色をつけたりどんどんするので、すごいなと思いました。
作業所の人が似顔絵を描いてくれた。うれしかった。ありがとうございます!