タイトル「障害理解とアートフィールド参画支援の取組」

トークセッション
野見山暁治 × 入江観「アールブリュットとアートの意味」


担当者名
吉武研司(絵画・教授)

参加人数
参加者 260名

活動日時
2010年5月7日(金)

取組の概要
アールブリュット(Art Brut:生の芸術)とアートの意味をテーマに、洋画家の野見山暁治先生と本学名誉教授の入江観先生のトークセッションを行った。障害者の制作するアートとアーティストの制作するアートについて、本質的違いがあるのか。アートの可能性、アートの持つ包容力、生きることへの畏敬、等について、お話しいただいた。また、事例紹介として、液晶プロジェクター、スライド等を使用しながら、海外での障害者のアート制作支援への考え方、現代のアートコレクションの形成、本学の取組についても触れた。

野見山暁治 先生
1920 福岡県に生まれる
1943 東京美術学校油画科を卒業。
1946 第2回西部美術展覧会で福岡県知事賞,
翌年会員
1952-64 滞仏
1956 サロン・ドートンヌ会員
1958 第2回安井賞侯補新人展で安井賞受賞
1968 東京芸術大学助教授(後教授)に就任
(1981年辞職)
1977 『祈りの画集 戦没画学生の記録』出版
1978 『四百字のデッサン』で
第26回日本エッセイスト・クラブ賞受賞
1983 北九州市立美術館と
東京セントラル美術館で回顧展
1986『野見山暁治素描集 デッサン』(用美社)を出版。他多数
1992 第42回芸術選奨文部大臣賞受賞
1994 第1回福岡県文化賞受賞
1996 練馬区立美術館で個展、毎日芸術賞受賞
2000 文化功労者に選出される

入江観 先生
1935 栃木県日光市に生まれる
1956 第33回春陽会展にて初入選
1957 東京芸術大学美術学部芸術学科卒業
1960 第37回春陽会展にて春陽会賞を受賞
1962 渡仏。同国立美術学校にて学ぶ
1963 サロン・ドートンヌに出品
1977 栃木県美術の現況展(栃木県立美術館)
出品、同館収蔵
1984 社団法人春陽会が設立され理事に就任
1985 女子美術短期大学教授に就任
1994 日本美術家連盟理事に就任
1996 第14回宮本三郎記念賞受賞、
日中文化交流協会常任理事に就任
2000 女子美術大学名誉教授および付属高校・中学校校長に就任
2004 蒼天の画家 入江観の世界展
(小杉放菴記念日光美術館/茅ヶ崎市美術館)

学生の声
アールブリュットの魅力を非常に良く知ることができました。私達の頭にはない発想や、美術の常識にとらわれない自由な表現に、これまで以上に興味が湧いてきました。その一方で、アールブリュットと呼んで別の枠組みに入れてしまう行為に、何となく差別的なものを感じてしまい、少し疑問を持ちました。

私が初めて障害者の絵を見た時の感想は、怖いということだったが、今回の対談を聞いて、何故怖いと思ったのかが少し分かった気がした。人間の中から出てくる情熱を、俗物などに邪魔されずに純粋に表現しているからだと思う。まだ理解は深められていないが、アートとアールブリュットについてもっとよく知って考えていきたいと思う。

今日、「情熱」という言葉が何度もでてきて、自分はこれを表現したいって言う気持ちがすごく大切なのだと思った。だから、自分は何を表現したいのかということをちゃんと考えたいし、明確なものを持った上で作品を作っていきたいと思う。

本当の芸術とは何か?を強く感じさせられました。そして、自分の中の世界を表現したい!!という強い気持ち、情熱の大切さ。ただ表現したい!!という純粋な気持ちの大切さ、今回の対談でたくさんの大切なことに気付かされ考えさせられました。

自分たちは様々な環境によって、知らず知らずのうちに制約されていてその縛りの中で絵を描いている、ということにショックを受けた。本当にやりたいこと、好きなことに対しては、たとえ倫理に反することでもやるくらいの情熱を持つこと、この言葉にもはっとさせられた。自分の今までの考え方、無意識の認識を覆されるような衝撃を与えられた。

アールブリュットという作品群のことをまず知らなかったので、今回初めて見て美術と教養の形にとらわれない純粋さにひかれる、というお二人の言葉にとても深く共感を覚えました。ただ単にひかれるだけではなく、この絵の中の「不気味さ」「怪しさ」「怖さ」など、理解の及ばないような感覚もありました。

常識という私達がつい気にしがちな事、絵を描くという意識や教育を受けて習った事などを超えた、本当に純粋に自分を表現しているという事が素晴しいと思った。教育という中にとらわれない表現も大切であると思った。