参加学生の感想・自己評価[2004年]

産科フロアー壁画の共同制作を通じて
大学 絵画学科 洋画専攻3年 学生

私は2004年の春「北里研究所メディカルセンター病院産科フロアーヒーリング・アートプロジェクト」に参加しました。私はこの壁画制作を通じ以下の様な経験をすることが出来ました。今回のプロジェクトで私は自学科の洋画の学生とファッション造形学科の学生と共同制作しました。構想を練る段階など、一人が出したアイデアを基にもう一人が考えていくという、お互いの意見を考え一つの物を作り上げていくプロセスを経験しました。ここでは、一人では思い付かない様なアイデアが話し合いにより出たと思います。これは同じ洋画の学生とも感じられましたが、ファッション造形学科の学生とは、同じ物を作るにも全く違った視点を持っていることが感じられました。

例えば、私は形の効果をどう見せるかを重点的に考えましたが、ファッション造形学科の学生は形の前のコンセプトを立てることや、目標に何を持ってくるかをしっかりと考えており、とても勉強になりました。そして違った考えを聞くことにより、自分の考えの位置を自覚出来たと思います。普段共同制作をすることが無かった私は、自分の内から描きたい物を探して描くことがほとんどだった為、むずかしい部分もありました。構想の段階で話し合い一致していた意見でも、お互いが同じ言葉で違ったイメージを持ち、方向性にずれが生じてしまったこともあります。しかしそれによりお互いに話し合い、また言葉では通じなかった意見も、お互いが絵を描き見せあうことで相手のやりたかったことを理解・共有し解決する方法も学びました。

私はヒーリング・アート壁画共同制作を行い、グループ制作の中で、自分の役割を考えることが以前と比べ身に付いた様に感じています。(制作の記録はこちら

 
ヒーリング・アートプロジェクトに参加して
大学 絵画学科 日本画専攻3年 学生

《北里研究所メディカルセンター病院の柱と壁画制作》

まだ大学に入学する前に初めてヒーリング・アートの絵画を見た時、なんてロマンチックできれいな絵なんだろうと感銘を受け、同時にとても癒されたことがあります。私も人を癒せるような絵を描いてみたいと思い、入学してすぐにこの活動に参加しました。ここでは、私がヒーリング・アートの活動を通じて学んだことや感じたことをお話したいと思います。

北里研究所メディカルセンター病院では、産科の壁に飾る壁画とナースステーション内の柱に貼る壁画を、同じ日本画の友達と共に制作しました。産科ということなので、あまり強い印象を受けるような絵ではなく、優しくて暖かい絵を描こうと二人で話し合って決めました。共同制作というのはお互いの意見が食い違ったり、まとまらなかったりすることが多く大変な面もありますが、イメージが確立するとその後はそのイメージに沿ってそれぞれがどの部分を描くかを決め、協力し合って描くだけです。しかし私たちの場合は、より良いものにしようと途中で絵を大幅に変更したりもします。丁寧に気持ちを込めて描いていき、絵が完成した時はものすごい達成感を感じることができました。なぜヒーリング・アートを続けるのか。それはヒーリング・アートは私に様々なことを学ばせてくれるからです。共同制作の意義や癒すとはどういうことなのか、などヒーリング・アートはまだまだ奥が深そうです。

ひとつ思うことは、癒す絵画にもいろんな種類があって良いのではないかということです。 ”癒し” を求めている人は多くいるはずです。どんな場面で、どんな作品が人々をどう癒していくか、ヒーリング・アートプロジェクトはスタート地点に立ったばかりだと思います。(制作の記録はこちら

《横浜市立大学医学部附属病院 イルカとキリンを描いて》

最初に病院を下見に行った時、私は冷たくて怖い印象を受けました。私ですらそう感じたのですから、子供たちはもっと恐怖を感じていたのではないでしょうか。そんな気持ちを少しだけでも取り払おうと、思いきり注意を惹く動物たちを壁面にしてデザインしました。

小児科でも年齢層が幅広いのでそこを考慮してどんなデザインにするか議論し、ただ可愛く描くのではなく物語を感じるように工夫しました。今回もお互いの絵をよく分かっているもの同志で処置室の一番広い壁を担当しました。そしてもうひとつ沐浴室の入り口付近の壁一面を私がひとりで担当しました。ひとりで描くのはヒーリング・アートでは初めてのことでしたが、私が持つ ”癒し” のイメージを出し切ることができました。

患者さんや医師や看護師さんにとても喜ばれたことが私には一番嬉しかったので、大学の授業と両立させていくことは大変ですが、また次のプロジェクトにも参加したいと思います。(制作の記録はこちら

 
私がヒーリング・アートプロジェクトに参加する意義とは
大学 メディアアート学科3年 学生

私がヒーリング・アートに参加する理由は、学校とは異なる場所で、人々とコミュニケーションを持つ良い機会であること、そして私の作品を通して人が和やかな気持ちや喜んでくれたらとても幸せだなと思ったからです。

私は、2004年の春「北里研究所メディカルセンター病院ヒーリング・アートプロジェクト」に参加しました。今回は産科フロアーに癒しの空間を演出するというものでした。壁面の他に、デジタルシートという新しい取り組みを体験しました。デジタルシートとは、手描きで描いた物を拡大し、シートにプリントするというものです。そのため、原画をきちんと細かい部分まで描いていないと、拡大してシートにしたときに失敗が目立ってしまいます。そのようなことを注意しながら制作していきました。今までは同じテーマで共同制作する機会はほとんどありませんでした。そのため、どのように進めたら良いのか始めは戸惑いましたが、お互いの頭の中にあるイメージを描きおこし、そこからよりテーマに合う作品作りにするための意見交換をしていきました。

また、自分本意でなく見る人の立場で作品を考えなければならない所がヒーリング・アートの難しさだと感じました。他の学科の人たちと制作できたことは、とても貴重な体験ができたと思っています。学校以外の所に目を向けるきっかけが得られたと思います。自分では思いつかない友達の意見から学ぶことも多く、自分にとってこのプロジェクトに参加したことは、とてもプラスになったと思います。これからは、このような活動を通してさらに外の世界に目を向けていきたいと思います。(制作の記録はこちら

 
ヒーリング・アートの意義について
大学 ファッション造形学科3年 学生

《横浜市立大学医学部附属病院、小児科の処置室》

今回は、小児科の処置室の処置台の周りの床とドアに絵画を制作しました。この制作では、子供達が処置室に入る恐怖心をとり除き、少しでも子供達にとって楽しい気持ちになったり、また恐怖心を忘れさせ明るい気持ちで満ち溢れるような部屋にしてほしいという依頼を受けました。その結果、全体の部屋を一つの物語として設定し絵を描くことにしていきました。これら二つの部屋は、「海」と「森」に設定し、とりかかりました。私は、「海」の部屋の床に「潮溜まり」を、ドアに「セイウチ」の絵を描きました。ここで注意したことは、子供達の成長に伴い「潮溜まり」の生物を知る勉強にもつながるよう、図鑑のように描写し子供達にとって親しみのわくように描きました。また「セイウチ」の絵は一つの物語が周りの部屋の絵とつながるように内容を統一しました。こうすることで、室内空間全体を通して子供達が過ごしやすい空間へつながっていったと思います。(制作の記録はこちら

《北里研究所メディカルセンター病院の壁画制作》

北里研究所メディカルセンター病院では、産科フロアーに飾る壁画の制作を行いました。ヒーリング・アートプロジェクトの意義は、三つあると思います。一つ目は、学生が普段の勉強の為ではなく、社会に目を向けること。二つ目は、病院での患者さんの気持ちを少しでも和らげるようなことを考え、グループで話し合うこと。三つ目は、心を込めて制作することであると思います。この壁画の制作を通して、産科フロアーの室内を少しでも明るく、穏やかな気持ちで過ごせるような壁画を私はグループで話し合い、制作しました。ヒーリング・アートでは、自己表現の為に絵画を制作するのではなく産科フロアーで過ごす人に合わせて考慮し、絵画を通じて心を元気にさせたり、不安定な精神状態を少しでも勇気づけることが主旨であると考えています。そうしたことを考慮し、壁画を制作することで、伝えられることはあると思います。(制作の記録はこちら

《北里研究所メディカルセンター病院のデータ制作》

産科フロアーのデータ制作では、出産後の赤ちゃんと親類との面会室の上下のスペースを制作しました。それにあたって、我が子を観る時の幸せいっぱいの場所であり、そのスペースでは、「幸せに」の意を込めて「幸せの花」鈴蘭をアーチ状に囲み、産科フロアー全体のカラーであるライトグリーンを基調に上下にまとめました。その結果、明るい空間演出へつながっていったと思います。(制作の記録はこちら