参加学生の感想・自己評価[2006年]

横浜市立大学附属病院外来壁面のプロジェクトより
 
大学 工芸学科2年 学生

原画検討会を通して、グループ毎に全く異なる表現方法だったので、同じフロアで展示することもあり、いかに全体のまとまり感を出すかが一番考えなければならないことだと感じました。対処方法を皆で考える中で、色調やメインとなるカモメの体形を揃えるだけでも、まとまりのあるものができるということを学びました。

他のグループから、様々な意見や指摘を受けたことで、本制作に向けて注意すべきことを事前に心掛けることができました。私たちのグループは、最も同グループのメンバー数が少なく、いかに制作を進める上でグループのメンバーで協力して、いかに完成度を上げるかが大きな問題となり、考えなければならないと思いました。そこから、メンバーの人数の重要性を感じました。少人数の方が、親密度があり楽かと思いましたが、本制作を通してメンバーが沢山いる方が、完成への能率を上げることが出来るだけでなく、様々な意見を出し合うことができ、より完成度を上げれるのだということを学びました。

作品の内容について考えたことは、様々な方の目に入る壁画としてどのような雰囲気の壁画が良いかということです。私たちのグループは眼科を担当したのですが、現地での原画検討会の際、看護師の方から患者さんの傾向を伺うことができました。現地の生の声は私たちの制作に大いに参考になり、見る人の立場になって壁画を制作するようになりました。

原画よりも、はるかに完成度を上げることができた本制作のパネルを設置して、横浜市大病院の雰囲気を明るくすることができたと感じます。重苦しい病院の雰囲気を変える効果が絵にはあるものだと改めて学びました。又隣同士のグループと調和の取れた壁画となり、全体を見たときも、私のグループを含めて見ても違和感なくまとめることが出来たと思います。そして、私たち学生と多くの患者さんが私たちのグループのパネルに対する感じ方の違いはあるのか、実際に展示する以前に比べて、より考えるようになりました。

ヒーリング・アートプロジェクトに参加して、仲間と協力して、何かを成し遂げることの充実感を味わうことができました。グループで制作する機会は、あまりなかったので、どのように進めていくべきか、不安でした。又プロジェクト参加当初は、なかなか意見がまとまらず、完成像を想像することができませんでした。しかしグループのメンバーと協力することにより、空いた時間に制作を進め、完成までたどり着けることができ、本当にグループで制作することの難しさを感じました。そして、対象の多くが外来患者さんという、今までにないもので、学科とは違う制作の楽しさがあることを学びました。

このプロジェクトは、様々な学科が参加していることもあり、他学科の学生と交流を図ることもできました。そこから、表現する可能性の広さを感じ、今後の制作意欲を掻き立てるきっかけにもなりました。美術は、制作する本人と第三者を同時に楽しませてくれる、本当にすばらしいものだと思います。私の専攻する分野で、何か患者さんを癒すことは出来ないか、考えるようになりました。これからも切磋琢磨して、第三者の心に留まるようなものを制作していきたいです。(制作の記録はこちら

 
大学 立体アート学科1年 学生

最初の病院での原画討論会は実家に帰っていたので参加はできなかったのですが、友達からメールで原画が描き直しと聞いた時には愕然としました。しかし後になって見てみると、その時私たちの原画はとてもヒーリングとよべるような絵ではなく、周りのグループとも統一のとれない絵になっていました。私たちは自分たちの希望が多すぎて走ってしまい、ヒーリングを目的とするものだと言うことを忘れていた気がします。この時に気づいたお陰で、グループ内の目的意識が高まった気がします。

本制作では、原画の詰めが甘くてパネルに描き込む時に少しずつ直しが入って大変でした。私は特大パネルのグラデーションを描いたのですが、色の混ぜ方が上手くいかず、納得のできる色に仕上げるまで何日もかかりました。そのため、できた時は本当に嬉しかったです。私たちのグループは、夜空と夜の海をテーマにして描いていたのですが、夜の海の青さを暗くなりすぎないように出すのが大変でした。何回も塗り直したり色の違いの修正をしたりしたのも大変でしたが、そこまでこだわりを持ってやれたことは凄く良かった事だなと思います。5個のパネルがすべて揃った時のあの充実感が今も忘れられません。

病院に設置しにいった日は雨で、一際病院内が暗く見えました。私たちのグループは一番奥の壁だったので、他グループの人たちのパネルが飾られていくのを見ていると、1つ1つの白い壁が様々な青色とカモメの絵で明るくなっていきました。それを見ているとなんだかワクワクしました。飾られてみると、自分が思っていたイメージとは違っていましたが他グループとの統一性も感じられて、自分の作品ではなく、みんなで創り上げた達成感を強く感じました。しかし、三階の先輩たちのパネルを見るとすごく大きくて、でも細部まで細かく描かれていて、空間の使い方にも驚きました。先輩たちの作品は本当に勉強になりました。このプロジェクトに参加して、他学科の友達もでき、いろいろと勉強になりました。夏休みの制作は、辛い時もあったのですがそれなりにまとめ上げる力も付き、充実した夏休みでした。大変なことも今は全てが良い思い出であり、良い経験としていつまでも忘れずにいきたいと思います。

ヒーリング・アートとは何なのか、ボランティアとは何なのかを全身で感じられたことに感謝しています。ボランティアは、人のためになろうという思いが強すぎると空回りしてしまうということがわかりました。

ヒーリング・アートというものは人を癒すのが目的であって、絵の善し悪しを決めるものではありません。本当に心から人のためを思い制作をしなければいけなかったなと反省しています。私は少し自分の願望を持ちすぎてしまいました。また、このような機会があれば今回の反省を生かしつつ参加して行けたらなと思います。(制作の記録はこちら

 
短大 デザインコース 情報2年 学生

参加の大きなきっかけは、大学案内の中に入っていたヒーリング・アートの冊子を見て、入学前から、ヒーリング・アートが気になっていたことでした。自分の好きな事、できることで、誰かの気持ちを明るくしたりすることは、とてもすばらしいし、このような機会を得るのはなかなかできないので、参加をしようと思いました。

今年は去年に比べて、原画討論会の回数が多かったです。そのおかげで、作品がどんどん良くなっていったので、討論会は多い方がいいと思います。他のグループの作品を何度も見る事で、方向性もだんだんとそろってくるし、お互い刺激を受けるからです。ヒーリング・アートは、個性よりも調和が重要です。全体の調和がとれるように、作品を持ち寄る事も大切ですが、ただ全員で集まって、先生の話を聞くと言う事も大切だと思いました。

実際に病院に行って、医師の方々の話を聞く機会を得られたことは、とても良かったです。やはり、病院に一番長くいる医師の方々が心地よく感じられれば、入院している方々も同じような気持ちになってくれるはずです。それに、実際に病院に行かないと分からないこともたくさんあったので、(光の感じや、スケール感)現場に足を運ぶ事の重要性を改めて感じることができました。
個人的に、本制作でとても重要だと感じたことは「基礎力」です。これは、実技感覚的なことの両方に言えます。ヒーリング・アートは絵の中に違和感を持たせて、人の目を引くものではありません。物事や現象をきちんと表現できている絵は、人に安心感を与えます。そして、その表現をするためには、土台となる基礎力が大切だと思いました。今回の制作では、自分の基礎力や計画性のなさに気付くことができました。

全体を見て感じたことは、全体の統一テーマの理解をもう少し、深め合ったほうがいいように感じました。基本的なルール(使う色のトーンを揃えるなど)を大まかに決めてみんなで話し合うことなど、もっと機会を持てたら良かったです。制作中はみんなまじめに、こつこつと作業していて、とてもいい雰囲気であったと思います。

実際に病院に行って、作品を設置したフロアを眺めたら、思った以上に、爽やかで楽しげな印象になったので、すごく嬉しかったです。小さなパネルがたくさん、いろんな場所に設置されていると、何となく楽しい気持ちになれると思いました。全体的なまとまりがよかったです。
2階と3階のイメージは少し違っているけれども、逆にそれが患者さんの気分転換の助けになるといいと思います。

私は、2年連続でこのプロジェクトに参加して、自分の出来ることで社会とつながり、少しでも役に立てたということは、とてもいい経験になりました。自分の好きな絵を描くのではなく、相手の立場や心理状態を想像して、「癒し」という目的を明確に持ちながらの制作は大変でした。普段の生活では気づかない細やかな心配り(患者さんが見るものなので、あまり彩度の高い赤は使わない、など)をしようと考えられたことは、私にとって、とても良い勉強になりました。(制作の記録はこちら

 
短大 美術コース1年 学生

【 原画討論会 】

私たちの班はまず、グラデーションに重点を置くことを考えた。その理由としては、
  1. 無駄な情報を外し、奇麗な色の移り変わりのみにすることで、精神的な安らぎを提供できる。
  2. グラデーションにより、空と海の境をあいまいにすることで画面上に一体感を演出し、見る人に優しい構成にする。

という二点が挙げられる。また、海の場所を特定しないで見る人それぞれの解釈にゆだねるという狙いもあった。グループ内で、資料の違いや見てきた環境の違いから、本制作中も色などの点で、衝突することがしばしばあったが、最終的には制作者の思う「海」にもいろいろあるのと同じように、見る人にとっての「海」も特定することができない。だから自分の思う海を思うままに描けばいいという結論に至った。

【 本制作 】

あれ程大きな教室で、全体に新聞を敷き詰め、あんな大人数でひとつの作品を制作すると言う経験は初めてだったし、その空間にいる全員が違う感性をもっていてひとつの空間(もの)を作ろうとしていると考えたときは、楽しくもなったし、また途方も無く感じたが、他の班の絵を見ることで、「ヒーリング」と言うコトバの捉え方の多様さを実感することができた。

例えば、私たちは「ヒーリング・アート」を『人を和ます』ものだと解釈していた。そんな私たちを驚かせたのが空を真っ赤に、またはっきりとしたタッチで遊園地の様子を描いていた班である。その時は、「あんな絵で人は癒されるのか?」と思ってしまったが、今になってもう一度考えてみると、”人を癒す”とは「=和ませる」だけでなく、「=人を楽しませる」でもある。その人の考える「ヒーリング・アート」とは今は行くことのできない場所(遊園地)を見せることで、患者さんの治したいという気持ちを引き出し、また行きたいけど行けないという気持ちを癒す。そういったところにあったのかもしれないと思う。

【 参加して感じたこと 】

初め私の班では、なぜこのプロジェクトにデザイン科の学生が多いのか、絵画の方が上手く描けるのでは?という話がよく出ていた。しかし、制作を終えた今は、ヒーリング・アートはデザインとアートの中間的分野であるという風に感じとれるのである。

まず、ヒーリング・アートは「万人に受け入れられるもの」「環境に溶け込んだもの」でなければならない、ということ。これはデザインにも通ずるところだと思う。しかし、「溶け込む」だけでは今回のプロジェクトの意味がない。ただ溶け込ませるだけなら壁の色を変えるだけでも十分である。ゆえにこのヒーリング・アートは調和しつつも、適度に主張していかなければならないのである。そしてそこが、アートと通ずるところだと考える。

自分たちは今回、過程においてそれぞれのやりたいことをあまり妥協せずに進めたが、その根本には「病気の人たちを少しでも励ましたい」と言う気持ちがあったのは確かである。そして今回のプロジェクトは、私に「人と環境の再認識」をする機会を与えてくれた。この経験を生かして今後の制作活動にもより一層役立てて行ければと思う。(制作の記録はこちら