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版画研究室ホーム > 版画の歴史 > 版画の歴史 6 1500年代
版画の歴史

6 1500年代


ルネッサンス

印刷の分野で版画が普及するにつれて、1500年始め頃には、もっと精巧なものが要求されるようになり木版画の技術は発展してゆきました。

一方、木版画はルネッサンス美術の影響で技術的に優れたものが多く作られるようになり、1500年頃には最盛期に達します。様々な新技法も開発されました。その新技法の中に多色刷りの木版画キアロスクーロがあります。

キアロスクーロ

3版程度の版を用い、立体感を陰影で表すように工夫されこれをキアロスクーロ(イタリア語で明暗の意)と呼び1700年頃まで制作されました。ハンス・ブルクマイアールカス・クラナーハ等も制作しています。

木版画から銅版画へ

1400年半ば頃から銅版での凹版画が登場し、1500年頃には技術的にも優れたものが多く作られるようになり、木版画から銅版画の時代へと移ってゆきます。普通の木版画は1500年代末頃から衰退してゆくことになります。理由は銅版画の方が精緻で克明な表現が可能だった事と、線描中心のデッサンを木版画にする場合の労力の大変さからくるのではないかと考えられています。

初期凹版画・エングレービング

初期の銅版画はビュラン(Burin)で直接銅板を彫刻しました。

アルザス地方では、トランプカードの画家、マイスター E.S. などの作品が残っています。その後、1400年代後半になるとドイツではマルティン・ションガウアー、ライン川下流域ではメッセネムやルーカス・ファン・ライデンらが活躍し、イタリアではアントニオ・ポライウォーロアンドレア・マンテーニャなどが活躍しています。

その頂点の域に達したのがドイツのアルブレヒト・デューラーです。彼は、金工師の息子としてニュールンベルグに生まれ、ドイツ各地を遍歴した後故郷に帰り、木版画で「ヨハネ黙示録」を完成させました。1500年頃より銅版画で制作し、1510年に秀作「メランコリア」や「騎士の死と悪魔」など銅版画100点を制作しました。

印刷・版画と出版

印刷は情報を伝えるために生まれたことから出版と大きな関わりがあり、またそれから派生した版画も出版の対象となりました。

活版印刷以前に作られた本は、僧侶や貴族のための祈祷書などで羊皮紙に手書きされた豪奢なものが多くみられます。その後、木版画が多く制作されるようになるとトランプカードや宗教を題材としたものが多く作られ、民衆の間に広まっていきました。

活版印刷の広まりとヨーロッパ全域での製紙業の発展が重なり出版は盛んになってゆきます。

1500年頃から木版画・銅版画ともに絵画の代わりに売買の対象となってゆきます。絵画はまだ宗教界や貴族たちだけのものでしたが、版画は貴族たちだけでなく、一般の人々の収集の対象となりました。有名なものは、イタリアのライモンディでラファエロの原画をもとに製版し銅版画を作っていますが、ラファエロと親交のあったバビエラ(Baviera)が版元となって出版しています。このような版元制度は、フランドル地方のアントワープでもH・コックが1548年に店を開いています。彼はイタリアルネサンスの画家の素描を版画にして売買し、更に北方ルネサンスのヒエロニムス・ボッスブリューゲルの素描も版画にして普及させています。この後、1500年後半アントワープはヨーロッパ最大の版画制作の地となってゆきました。

1600年代になると同地に H・プランタンがヨーロッパ最大の印刷所を開設し、版画を制作する一方、教会用印刷物を供給することになります。このような版画の普及は、ハールレムの H・ホルツィウスの活躍や、ルーベンスが版画家に自作を複製させて広めたことに繋がってゆきました。

エッチングの登場

エッチングが版画の歴史に登場するのは、1500年頃アウグスブルクのダニエル・ホッファーが鉄板でのエッチングを初めて行ったとされています。デューラー、アートドルファー、ヒルシュフォーゲルも鉄板での作品を残しています。それ以前、14世紀頃から鎧や武具に装飾をほどこす方法として金属の腐触法が行われていました。鉄製の武具などの表面にワックスを塗り、針で掻き取り、そこに酸を擦り込み凹部をつくります。

この腐触法を版画に応用したものがエッチングです。1520年頃にネーデルランドのルーカス・ファン・ライデンが銅版でのエッチングを始め、銅版に適した描画用防触剤の開発や腐触液の研究がされ、銅版画に必要な基礎が確立しました。その後、ヘルクレス・セーヘルスは腐食法を駆使して様々な技法を試しています。

ハンス・ブルクマイアー
聖ゲオルギウス



マルティン・ションガウアー
聖アントニウスの誘惑 1471-1475


アルブレヒト・デューラー
メランコリア 1514


マルカントニオ・ライモンディ
嬰児たちの殺戮 ラファエロに基づいて制作
1510-1520頃



ダニエル・ホッファー



この時代の作家

ヒエロニムス・ボッス Hironymus Bosch (1450-1516)
ピーター・ブリューゲル Peter Brugel (1525-1569)
ルカス・クラナーハ Lucas Cranach (1472-1553)
ハンス・ブルクマイアー Hans Burgkmair (1473-1531)
アルブレヒト・デューラー Albrecht Durer (1471-1528)
ダニエル・ホッファー Daniel Hopfer (1500-1549)
ヘルクレス・セーヘルス Hercules Seghers (1589-1638)