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プログラムについて 取組の具体的内容

1.教育課程、教育方法等
履修プロセスは、「体験フィールド創出プログラム」というコンセプトに基づき、学科専攻を超えたアート&デザインの《実践的フィールド》の構築を目的に編成されます。平成18年度より試行、19年度よりカリキュラム上に位置付ける「コア科目」と共通理論・関連演習科目に加え、各学科専門科目を主軸に活動するチーム実践型、グループワーク型のプログラムによって構成されます。個々のプログラムはその内部に、学生主体で運営されるプロジェクトを複数含みます。本プログラムはプロジェクトの選定、デザイン、運営を多面的にサポートします。
○コア科目…大学での教育課程と融合する柔軟な教育形態や教育課程開発から海外サービス・ラーニングや国内での従来型のサービス・ラーニングの形態をとり、「環境論」の他に「素材論」等をコア科目に加えて学科専攻科目から学部共通科目に発展させる予定です。
○実践型プログラム…講義、演習に加え、次の<図3>の通りワークショップ、コラボレーション、プロジェクト等表現そのものを主軸とする実践型教育を行います。学生達が主体となり取組むプロジェクト活動は、アートドキュメント(実績記録等)により検証されます。

図3

カリキュラムの核であるコア科目の「環境論」は、共通専門科目の位置付けであり、学生はどの学科からも履修できます。座学として実践するのに留まらず、学生たちは自らの発意により独自のプランを携えて地域とのフィールドワークを実践します。教室を飛び出し実社会に交わることで、地域や社会への理解を深めると同時にその課題を知り、解決策提示や作品そのものを一般に公開することにより、自らの成長を確認します。
例えば、本学のファッション造形学科の学生は、今ではほとんど顧みられなくなった植物の苧麻(からむし)を繊維素材に、青苧(あおそ)の糸づくりに取組んでいます。この活動に取組む学生の中から「e (人の繋がりの境界線としての衣服)」環境プロジェクトが現れました。学生8名、教員1名、スリランカ人8名の参加でしたが、環境論の授業が契機となり、古着で作った何人分もの「繋がった服」を他者と協働して着る体験を実感し、繋がる服は不自由であるけれど、他者との境界線が無くなり心で繋がる可能性を拡大しました。そんなフィールドワークやワークショップの活動を銀座、原宿、本学杉並キャンパスで人々に参加を呼掛けながら実践し、正に結果は、着ること、ころも(衣)、ファッションや環境の本質に迫る実践力の獲得でした。

2.取組の実施体制…地域等との協働連携
本申請プロジェクトでは、大学が国内外の地域、NGO、NPO、教育機関等と協働連携することが前提となっています。学生達が自主開発するプログラムについて、プロジェクト審査し1件につき年間30万円〜100万円までを大学が助成します。各学科・専攻が連携してその仕組を教育研究活動の柱に据え、今後3 年間の実践計画、具体的プランとして推進する学内合意を取り、学長の意思に基づき実施体制を構築しています。現在の協働連携は、国内外の大学、研究機関に加え、相模原市、相模原産業創造センター、神奈川県立相模原公園、繊維地場産業(半原町)、建築研究者、農業従事者等であり、今後は農学、生物学等の分野、生物資源研究所(旧農林省蚕糸試験場)、横浜シルク博物館、UNESCO等の機関を予定しています。UNESCOとの協働としては、平成19年に「ジョシビの無形文化遺産プロジェクト」を実施しました。詳細は無形文化遺産プロジェクトサイトをご覧ください。

3.取組の独創性又は新規性
美術教育の現場で農(のう:自ら土に触れ、自らの手で育てることを意味します。)は忘れられた概念ですが、農の重要性を認識し、食育の現場で<教育ファーム>を必要とするように、美術の中で〈育てる素材教育〉の展開を本学では計画し実践します。現在まで継続してきた自然素材教育に、<美術の中での教育ファーム>ということを新たな軸として加えて提唱します。本学の考える素材作り教育の方向性はふたつあり、ひとつは「農」の素材教育であり、もうひとつは「自然素材(岩、砂、土を含む)」に手を加えて、新たな命を与える過程をもつ「つくる」素材教育です。本学の<素材と環境プロジェクト>は相模原キャンパスを中心に、相模原市内、相模川・境川流域の全域をフィールドワークの対象として活動します。学生はフィールドワークを通し地域の気候風土を知りその変化を受容し、風土に適合した素材発見、素材づくりから作品化までの一貫性の中で、モノへの循環を地域の人々と共に学び共有化します。
例えば、地元地域の農家や繊維関係の職人の人々と繋がり、紙を漉くために楮(こうぞ)・三椏(みつまた)・竹・雁皮(がんぴ)等、紙の原材料の自生地等を知ることや、新たな取組である教育ファームでの<育てる素材>を目的に土壌調査、土壌改良等の知識・ノウハウを得て、原材料に工夫を加える技術の伝承を受けます。地域や他大学との連携により異分野の発想が取り込まれることで、制作活動が活性化して作品の独創性をも生み出します。そして、学生自らが良い素材をつくり出すことで、より独創的な作品づくりに繋がる新規性を帯びた取組です。
財団法人建築環境・省エネルギー機構(旧(財)住宅・建築省エネルギー機構)の分類にある、地球温暖化防止など‘Low impact’の取組が多い中、本取組は‘Low impact’(地産地消など)を含む‘High contact’(人が自然に身近に接する)で、‘Healthy & Amenity’(土に触れ太陽の下で心地よい健康を維持する)であることが特徴です。




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