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Project B 絵具(顔料)プロジェクト
活動報告2010200920082009

実施期間:平成2年4月〜継続中
参加学生:美術学科日本画専攻ほか
担当教員:美術学科日本画専攻 橋本信
場所:本学相模原キャンパスその他相模原地域

■プロジェクトの概要
本プロジェクトは、本学の岩絵具を中心とした顔料研究を、環境というキーワードで整理発展させながら、それらを使った学生の制作活動や、使用した学生によるワークショップ・展覧会につなげ、学生の環境問題に関する意識の向上・問題解決・実践力を養うことを目的としています。

■成果
教育用目的で「エコ岩絵具21」という名称の環境への負荷が従来品に比べ低い岩絵具を開発し、日本画の授業や特別授業・サービスラーニングにて学生に適当な量の絵具が作り出せるよう工夫した行程で、岩絵具を製造してきました。それを使い、各自が作品制作を行うと共に、本年は社会福祉法人「すずらんの会」の協力を得て学生主体のワークショップを行い、学び教えることを体験しました。従来、市販の日本画岩絵具は、専門家用の絵具として開発されており環境への問題・安全性などにおいて多少の問題を含んでいました。学生は、それらについての意識を深めるとともに、多くの人とこの伝統的な画材の楽しさを共有出来ることを知り、また、画材と環境について考えることになりました。

1.素材実験の実施
昨年までの研究・実験成果の上に、造粒岩絵具については、学生の実験製造が容易な分量の製造を可能にし、よりよい分散・造粒方法の検討とほぼ解砕機を必要としないで製造可能な方法について検討しました。また、バラの色素の造形素材としての利用を考え展覧会を行いました。
まず、造粒機を使い1色300から500gの岩絵具を製造してゆきました。使用の造粒機に対する処方は、担当教員(橋本・尾藤)により調整されたもので、使用の担体及び色材は、安全性の高い「FDA*登録顔料」を中心に使用しました。
顔料プロジェクトでの使用の岩絵具の研究は、大きな造機で製造できるように教員サイドでの研究が進み、特許出願とともに日本画絵具の小売店で「環境に優しい岩絵具」教育用として販売されています。特別授業として日本画の学生を対象に、教員の開発した簡易な方法で顔料プロジェクトで使用されている安全性の高い顔料の実験製造を行うと共に、それぞれの制作に活かしていきました。
*FDA(Food and Drug Administration)食品医薬品局の略称で消費者が生活で接する機会のある製品について安全性に基づきその許可などを行うアメリカ合衆国の政府機関。

2.問題解決ワークショップ等に取り組む学生プロジェクト活動展開

2-1.学生の作品への造粒岩絵具「エコ岩絵具21」の利用とその為の特別授業。
日本画:2年素材研究、日本画ゼミ 3年日本画ゼミ 4年卒業制作学生(約100名参加)

2-2.サービスラーニング日本画ワークショッププロジェクト(2名参加)
社会福祉法人すずらんの会、障害者福祉サービス事業所グリーンハウスにおけるワークショップを学生が計画し、11月7日に「はじめての日本画体験」ワークショップを実施しました。2名の学生が指導者として参加し貴重な体験を得る事ができました。初めての材料に参加したみなさんも真剣な面持ちでしたが、参加学生の指導のもと本格的な岩絵具を自由に使って、味わいのある作品が完成しました。

3.バラで出来たものたち展
サービスラーニングとして、5月に「バラで出来たものたち展」推進チームを募集し、バラを使って色素の抽出などを行いました。抽出した素材を使った展覧会が開催されました。(バラ・プロジェクト)
方法は、教員が平成12年にまとめた方法を基本に乾燥粉体を使い抽出しました。方法としてカッターミル、グラインダーミルを使い粉砕し絞り機でしぼり濃縮しました。以前の方法では、最初にエタノールを使い、またそれを多く使用しましたが、今回は不馴れな学生も多く、エタノールの使用は減らしました。退色などを遅らす為にタンニンなどを多く含まないようにするためには、エタノールやそれらを遠心分離機でなるべく純粋にすることが重要と思われましたが、今回の濃縮液には最終段階での腐敗防止に利用するだけにしました。

3.その他
相模川でふるいを利用し3~5mmの石を採集し、モザイクなどの造形素材としての利用を考察しました。採取した石に混ざった青や緑色のものは鉱物です。磨彩する絵の具としての面白さを再確認することができました。また、「もみじ」の紅葉した葉から赤い色素を取り出す実験を再度行いました。同様の方法で落葉して茶色くなったものとの比較も行いました。

■今後(22年度)活動について
素材と環境展に向けた取り組みとして小石のモザイクなど造形素材の開発と利用、「エコ岩絵具21」の利用・普及などを行っていきます。
また、本プロジェクトであげた、理科教育と連携する試みについては、平成23年度より県立相武台高校と共同で「芸術と科学」と称する授業の取組を開始する方向で検討中です。内容には、モノと表現・素材と表現を考えるひとつの要素として本プロジェクトの成果も取り入れる予定です。

1 - エコ岩絵具21の混色顕微鏡写真 2 - 日本画の学生を中心に行われた岩絵具制作の特別授業 3 - サービスラーニングでの岩絵具制作の様子 4 - 顔料プロジェクトの手法によって実験製造する特別授業 5 - 「はじめての日本画体験」(社会福祉法人すずらんの会) 6 - 「はじめての日本画体験」(社会福祉法人すずらんの会) 7 - 「はじめての日本画体験」(社会福祉法人すずらんの会) 8 - ワークショップ作品例 9 - 相模川河原での採集
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