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Project E-1 注染プロジェクト
活動報告20112010200920082009

実施期間:平成18年4月〜継続中
参加学生:美術学科、デザイン学科・工芸学科、アート・デザイン表現学科
担当教員:デザイン・工芸学科 大澤美樹子 横山朋子
     アート・デザイン表現学科 小林里江
     外部講師 井関佳乃 内藤早苗
場所:本学相模原キャンパス、その他

【関連ページ】
*プロジェクト成果発表・展覧会

【実施プロジェクト】
*注染手拭プロジェクト
*注染B反手拭プロジェクト

■プロジェクトの概要
「注染手拭プロジェクト」では、日本の伝統染色技術である「注染」を学び、学生の感性による新鮮なデザインの手拭を製品化しています。
「注染手拭B反プロジェクト」では、僅かな織りキズや染めムラのためにB反(規格外)となった布を、女子美術大学(以下女子美)の学生のデザイン力で新しい形に甦らせる製品開発を行っています。このプロジェクトは、貴重な職人の手仕事で染められた手拭や浴衣がB反となり使う目的がなく処分されていくのは、肌触りの良い日本の布素材と伝統技術を考慮すると、非常にもったいないということから出発しています。
注染とは、主に浴衣や手拭を染める際に用いられる世界に類を見ない日本の伝統染色技術です。布と布の間に防染糊を型置きし、模様をつけ、上から染料液を注ぎ、下から吸収して染めるため、模様や色が表裏の区別無く染められる点が最大の特徴です。全ての染色工程において職人の手仕事が携わっているため、染め上がった製品は柔らかい柄の輪郭をもち、機械染では表現できない温かみのある仕上がりになります。また、模様や色に表裏の区別がない特徴を利用し、空間を仕切る飾り布や身につけるストールとしても応用可能です。布素材は、日本独自の「さらし」という木綿で、吸湿性に優れ、肌触りも良く、使うほどに柔らかく風合いも良くなるという利点があります。
平成22年度は、そのプロジェクトの一環としてフランス・パリのアトリエ・ビスコンティを会場として「b・tanぬぐい」の2回目の展覧会も開催しました。
女子美は、この注染を教育に取り入れている唯一の美術大学です。伝統染色技術の一つである注染の職人仕事と美大生の斬新なセンスを活かし、注染の新たな展開を生み出すことを軸にこのプロジェクトを進め、多くの作品や製品を開発してきました。

■成果
【プロジェクト成果発表・展覧会】
・第一回目
「ぬぐい―注染手拭と女子美の出逢い―」展
実施期間:平成22年4月2日〜4月15日
会場:江戸伊勢型紙美術館・紀尾井アートギャラリー

・第二回目
「b・tanぬぐい」パリ展 
実施期間:平成23年2月8日(火)〜2月19日(土)
会場:Atelier Visconti Paris,France

【注染手拭プロジェクト】
参加学生数:25名(工芸14名・デザイン4名・日本画5名・ファッション造形1名・メディアアート1名)

□プロジェクトの趣旨・目的
日本の伝統染色法である注染についての学びを活かし、注染では難しい布素材を用いたり、美大生の自由で新鮮な発想による手拭デザイン柄の研究発表を行い、その内の数点を製品化しました。注染の特色を活かした自由なデザイン、用の目的や低コスト化にも考慮した、小さな布に完結されるデザイン表現に挑戦し、デザイン力を高めることに取り組んでいます。学生にとって、社会に通用するデザインを探求する実践的な機会となっています。
手拭は、日本独自の良質な木綿素材「さらし」を用い、「用と美」を兼ねた日本文化の特徴を持ち合わせています。

□成果
学生オリジナルの手拭デザイン72柄のうち14柄を製品化し、その成果を第一回目「ぬぐい―注染手拭と女子美の出逢い―」展で発表しました。
学生は手拭のデザインを考え、注染技法の実習から職人の技を知り、製品化までの流れを実体験しています。デザインを製品化するには技術を学び、その特徴を捉えたデザインを考える必要があることを学んでいます。また、消費者の立場やコスト面を考慮する視野など、普段の授業では学べない社会につながる実践的学習となっています。
本年度は「レトロモダン」をテーマに、本来の注染手拭の特徴である「藍色や一色物」によるレベルアップしたデザインを試みました。5月に鑑賞した大正から昭和にかけての手拭の秀作から学んで、約30点のデザイン画が完成しており、本学美術館で開催した「素材と環境展」にて発表、投票選考を行いました。そのうち4点を製品化しました。

1 - 型紙制作の仕上げ 2 - 柄をつける型置き 3 - 染め上がった手拭 4 - 名入り手拭のポイントを学ぶ

【注染B反手拭プロジェクト】
参加学生数:9名(工芸6名・デザイン1名・ファッション造形2名)

□プロジェクトの趣旨・目的
見学授業を行っている注染工場には、僅かな染や織キズのため、製品にならず処分されてしまう手拭があります。日本の伝統染色・注染と熟練職人の技術、素材の良さが集約されている作品だと考えるともったいないことです。
本プロジェクトは、これらを学生のデザイン力によって、新たな価値を蘇らせ、製品として発信していく取組です。学生は、僅かな染ムラなどで商品にならないB反(規格外品)を、技術・素材面から見直し、社会に通用するデザインとは何かを探求する試みを実践し、学生のデザイン力によって、新たに製品化、社会に発信しています。学生は、環境への意識を日々の生活の中で高め、廃棄予定の商品を製品として蘇らせる社会的責任や、デザインが社会に与える影響力についても学んでいます。

□成果
関東注染組合と2つのNPOと知的障害施設と多くの方々から協力を得て、その成果を第一回目の「ぬぐい―注染手拭と女子美の出逢い―」展にて発表しました。
さらに、デザイン作品45点中の7点を製品化しました。展覧発表は、B反という廃棄予定される商品が、学生のデザイン力によって製品へと価値を高められたことを確認できる成果となりました。
第一回目の展覧会後、関西方面からもB反手拭の提供を頂き、新たに3件の発注を受けるに至りました。2件は、NPO法人GoodDayからの依頼です。環境庁の助成を得た廃棄処分になったヨットの帆を蘇らせる活動とコラボレーションし、バック制作やタンブラーデザイン制作を手掛けています。この他には、本学美術館から校章柄のB反製品の商品開発の依頼を受けました。
本取組趣旨である「捨てられる物を新たなデザインで蘇らす」を維持するために新品の材料を用いることは極力避け、学科を越えたアイデアの協働により、互いの得意分野を活かした発想を持ち寄り、デザインの視野を広げました。特に平成22年度は、発注者の条件(要望やコスト等)を考慮して製品を作り出すことに挑戦し、具体的な製品化における実社会の厳しさや困難を学ぶ良い体験をしました。

写真撮影 image4:圷邦信写真事務所

1 - ヨットの帆を洗う 2 - 廃棄処分になったヨットの帆を使ったバックの試作品 3 - B反手拭と使用済みフィルムのタンブラー 4 - ミュージアムグッズ「JAMバッグ」
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