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Project H わたけん_にこぷん
活動報告201120102009

実施期間:平成21年4月〜継続中
参加学生:工芸学科、デザイン・工芸学科
担当教員:デザイン・工芸学科 横山勝樹
協働連携先:神奈川県立相模原青陵高等学校
場所:本学相模原キャンパス 他

【関連ページ】
*にこぷん
*エココン・活動受賞歴
*オーストリッチーズ
*GM
*baishakhi

■プロジェクトの概要
日常生活にモノが溢れている現在、自分が食べている物や着ている物のルーツがとても分かりにくくなってきています。
この取組みは、とても身近にありながらもあまり知られていない「ワタ」という素材に目を向け、土作りから収穫、さらに糸から布になるまでを、『はぐくむいやし』をテーマに実践するプロジェクトです。
身近な素材を一から育て見つめ直す事で、新たな発見や気付きを得て、素材や環境、その現状に自然と興味を持てるようにする。そしてそれが私たちの視野を広げ、また新たな発見へと繋がって行く事を目指して活動をしています。
日本は国内で使われている綿の殆どをアメリカやインドなどの海外からの輸入にたよっています。
この輸入されている洋綿産地(アメリカ、インド等)での農薬の大量使用は素材としての安全性や生産に関わる人々の健康の問題など懸念される材料が多くなっています。和棉は単に生産性の悪さのために社会から消えつつありますが、その良さや問題点を実体験を通して考察し、作品化することを本プロジェクトの目的としています。
今年度は、発足当初の『ワタを育てることで、素材や環境へ視野を広げ、新たな発見や気づきを得る』というヴィジョンを継承し、さらに本格的な活動を行いました。

※育てているワタの種類
洋綿-和綿に比べて繊維が長くコットンボールも大きいのが特徴。
茶棉-茶色い天然有色棉で、着色の必要がないのが特徴。
和綿-江戸時代から作られている日本の棉で、繊維が短く、コットンボールも小さいのが特徴。

■成果
1.肥料比較
昨年度の実験結果より、三種類の土(アクアソイル・ダチョウの糞・鶏糞)からダチョウの糞一種類に絞りました。何の肥料も加えていない土と、ダチョウ糞を肥料として加えた土で畑を作り、ダチョウ糞が肥料として有効かどうかを調べています。
ダチョウ糞が肥料として有効であることがこの実験から分かれば、ダチョウ牧場の今後の商品開発へと繋げられるのではないかと考えています。

2.他素材への探求
・7月31日 紙プロジェクトとのコラボ:紙漉ワークショップ
素材を見つめる同じプロジェクトとの特性を重ね合わせ、新たな素材探求。視野を広げるため、紙漉きの技術の伝承と同時に裂き織りにも取り組みました。

・11月13日 藍の育成・藍染め:和紙の藍染ワークショップ
昨年度の藍染体験に触発され、自ら藍を育て、その藍で自分たちで漉いた和紙を染めました。美しく藍色に染まった和紙は、第2回目のワークショップで育てた綿と共に織り込まれ、小さな布の作品にすることができました。 

・11月27日 糸紡ぎ・布織りワークショップ
綿繰りをして綿と種を分離させ、簡易スピンドルで綿を紡ぎ糸にしました。さらに簡易織り機で、糸を織り込み布を織りました。
育ててきた「植物」であった棉が「布」となり、私たちの生活で使えるものとなりました。この営みを体感してもらえるワークショップとなりました。
また、自ら漉き、藍で染色した和紙を裂き、よってできた紙糸と、いったん役目を終えた布を裂いて生き返った糸(布片)を織り合わせ、一枚の布にする裂き織りも体験しました。
これらは、それぞれにいろいろな思いのこもった世界に一枚の布となりました。
※裂き織りについて
綿を育てていた北限、つまり日本で育成できるもっとも緯度の高い地域が栃木県であったために、東北に住む人たちにとって、布は大変貴重なものでした。「布を切るのは命を切るのと同じこと」という言葉が残っていることからも、そうした生活の中で、布は最後まで大切に扱われていたことが分かります。一度役目を終えた布も裂いて再び布片にし、また布としての命をつなげていく…そうして作られた布を裂き織りといいます。

3.その他

  • 8月12〜14日 広島県尾道市向島へ研修旅行。立花テキスタイル研究所にて、今まで使用したことのない道具を使った糸紡ぎを体験しました。また帆布工場も見学しました。
  • 9月12日 神奈川県立相模原青陵高校文化祭にて活動の展示
  • 10月22〜24日 女子美祭にて展示

■「ワタ」を育てることから見えたこと、学んだこと
自分で綿を一から育て、糸にし、布にするという一連の作業をすることで、綿が育つ環境や、自分たちを包んでいる身近な布が出来上がる環境を知ることができました。
また、綿生地のように身の回りにある当たり前の物が、見知らぬ場所で、沢山の工程を経て出来ているのだという事を実感することで、綿を育てるという活動だけでは出会えなかった人や場、つまり別の環境とさらに繋がることができました。
コットン紙の存在を知って「綿と紙」の間に繋がりが生まれたように、様々な物同士は別々の物ではなく、違う見方をすれば、いつかどこかで素材と素材、物と物とで繋がっていることを、綿を布にする作業一連から学びました。
実際に綿を育てることによって、わたしたちの心・意識の中で「いやしの感情」が育まれ、また素材と会話することにより、素材への発見や興味が自然とわいてきました。それは、別の素材への興味や生き物に対するいとしい気持ちが芽生えていく扉を開くきっかけともなりました。
便利になりすぎた現代社会の中では、自分自身の食べている食品や着ている衣類がどのようにして出来ているのか判りにくいからこそ、衣類の原料となるワタを自らが育て、加工する一連の作業によって、モノの大切さに気づきを得ることのできた貴重な体験となりました。

1 - 収穫期を迎えたワタ 2 - 収穫したワタ 3 - 原料を攪拌 4 - ワタから出来た紙漉原料 5 - 紙漉きの準備万端 6 - 小さな枠でワタの紙を漉いてゆきます 7 - 丁寧に乾燥させます 8 - 大きめの枠で漉いてみる 9 - 溜め漉きにも挑戦しました 10 - 藍染め体験 11 - 藍染め体験 12 - 染め上がった綿素材たち
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