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Project A 紙プロジェクト_01
活動報告20112010200920082009

実施期間:平成2年4月〜継続中
参加学生:絵画学科洋画専攻版画コース・絵画コース・デザイン学科
担当教員:絵画学科洋画専攻 馬場章
場所:本学相模原キャンパス・紙漉場、北側畑、相模原地域

「紙のプロジェクト」は「紙漉き」を通して紙について学習することを目的に、「紙の歴史」「身近な植物繊維から紙を作る」「紙漉きに関する指導法」の項目からなっています。

■成果
1.女子美術大学附属での体験学習
日時:7月22日・24日
場所:女子美術大学付属中学・高等学校 6号館地下
参加人数:中学1年生・中学3年生、高校2年生・高3年生 合計15名
参加学生:大学院2名、学部生(版画コース)2名

【内容】
女子美術大学付属中学・高等学校で、体験学習として紙漉きを行いました。
・生活廃材の綿ボロから絵の描ける紙を作る。
・和紙の漉き方を体験する。
・紙の用途について考え、その目的に合った紙を漉く。(今回は水彩用紙)

【事前活動】
実施日の一週間前に各生徒の家庭から集めた綿の古布を5cm四方に細かく刻み、相模原に送ってもらう。白い布と色着きの布2種類が用意されました。布の色ごとに苛性ソーダ30%の液で3時間ほど煮て、糊分や染料を分解して洗浄。白色の布、色着きの布からホーランダービーターで細かくして繊維化、それぞれ3時間を要しました。色が抜けきれていないため、くすんだピンク色の原料となりました。

【実施】
・7月22日
付属中学・高等学校で「紙漉き体験学習」を実施しました。(大学院ティーチングアシスタント2名、学部生2名参加)
白い原料から、溜め漉きの方法で厚みのあるA3版の紙を漉く。漉いた紙はすぐに脱水し、つるして乾燥する。同じ方法で色着きの紙をA3版の大きさに漉く。学部生が生徒をアシストしてそれぞれ1時間ほどで全員が漉き終わりました。その後だいぶ慣れてきたので、はがき大の紙を自由に漉いてみました。原料があるだけ漉き、乾燥は平らなものだけでなく、校舎の壁などにも張り着けてみるなど、マチェールのある紙の作成も体験しました。

・7月24日
和紙を漉く。洋紙の溜め漉きと異なり和紙の流し漉きは、少し技術を要するため生徒と学生が組んで紙漉をおこないました。原料は楮。原料を水に分散させ、ネリを加えるところから体験しました。
漉きの基本動作を確認するため、参加学生が手本としてひととおり「流し漉き」の作業をデモンストレーション、その後漉き舟を2つ用意して、それぞれにティーチングアシスタントと参加学生がついて水の汲み込みまでを手伝ったのち、ゆすりは生徒たちに自由に体験してもらいました。ほとんど生徒は失敗も無くすぐに慣れ、漉いた紙は、薄いテトロンの布の上で脱水し、窓ガラスやケースのガラスに張って乾燥。慣れてくると高校3年生はひとりでも紙を漉くことができるようになりましたが、下級生には少しアシスト(水の汲み込みの時)が必要だった様子です。
最初の日に漉いた洋紙に、にじみ止めのドーサをほどこしました。乾ききっていないものは、アイロンをかけ乾燥してからドーサを打つことができました。
紙のテキストを配布して読んでもらいましたが、専門的過ぎたのか下級生には少し理解が難しい内容だった様子です。最後に附属高校の教員がアンケートを用意、学生は参加した生徒たちから体験を通した意見を取材し、それぞれ生徒の感想やレポートにまとめ今後の活動に活かされる良い資料となりました。

【結果】
生徒たちにとって、言葉による説明だけでは把握しきれなかった紙漉きのしくみや流れも、実践することですぐに理解できたようです。日頃の実技経験からか、目で学習する(他の人がやっていることを観察して自分の経験に繋げる)ことに慣れており実践への戸惑いは感じられませんでした。最初は学生のアシストが必要だったものが、2回目からはほとんどの生徒が自分自身で紙を漉けるようになりました。自分ひとりで漉けることで達成感がより高まっている様子が伺え、遊び感覚で、実用に耐える紙が簡単に漉けることが体得できた結果となりました。

2.大学でのワークショップ
日時:7月19日・20日
教育GPに参加する学生が一定の技能を身に付けることを目的に、講師に『阿波紙ファクトリー』の藤森洋一氏を招き女子美術大学紙漉き工房でワークショップを開講しました。具体的には、大学の設備・機材を用いた大判の和紙漉きの技術を習得(道具のセッティングから原料の濃度および漉き方の技まで)し、学生でも職人並みの和紙を漉けるようになることを目標としました。その結果、ワークショップ以前は設備は整っていたもののなかなか完全といえる大判の和紙が漉けませんでしたが、漉き舟の高さ、枠の高さや支点の位置の調整、ネリの濃度の調整などの指導を受けたことでほぼ完全な技術を習得するまでに至りました。今回の経験で、学生自らがある程度の大判和紙を漉くことが可能となったことは大きな収穫でした。

3.阿波紙ファクトリーでの研修視察
期間:9月2日〜6日
徳島の工房で研修を行いました。
研修目的は,紙漉プロジェクト企画の子供達に紙漉を体験させる講座で指導するために、専門の技術を修得する事。基礎知識とその応用を学ぶため、職人の紙漉き技術を視察しました。
日本では珍しい竹繊維と楮繊維をブレンドした紙の大判水彩紙の手漉きを特殊な漉き枠を借りて体験することができました。その他に、藍染め紙、染めた繊維での漉きがけの技術を体験しました。
学生は、専門家の指導の元に大学では行えない実作業を体験し、日頃の紙漉きの知識と現場での知識がつながったことで新しい展開が見られました。同時に、機械漉き和紙の機械を1台開放していただき、原料のブレンド比を変えた数種類の試験紙を漉きました。特に大学での素材実験で得たデータを基に、楮繊維と雁皮繊維をブレンドして試験的に機械漉きを行ったことは有意義でした。阿波紙ファクトリーには、研修後も原料のブレンドや方法を変えて試験を実施していただき、3月までに幾種かの紙を漉いていただくことになりました。3月中旬に試験紙が大学に届き、学生がドーサ引きして刷りの実験を行いました。

1 - 相模原校地での三椏栽培 2 - 女子美術大学付属中学校・高等学校にて紙漉き体験学習を実施 3 - 生徒が集めた綿の古布を、大学で繊維化した材料・叩解60分後 4 - 当日は付属中高生15名の生徒・大学院生2名が参加 5 - 和紙の流し漉きを体験 6 - A3版の水彩紙、はがきなど、美術室の床に広げて乾燥中 7 - ガラスにはローラーで貼り付けて乾燥 8 - 大学の設備・機材を用いて大判の楮(こうぞ)紙を漉く 9 - 藤森氏の指導で学生も大判和紙を漉くことが可能になりました 10 - 徳島・阿波紙ファクトリー 11 - 竹と楮の繊維紙や数種類のブレンド比の違う試験紙を漉きました 12 - 特殊な漉き枠を借り、大判水彩紙の紙漉を体験する
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