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Project E わたけん_にこぷん
活動報告201120102009

実施期間:平成21年4月〜継続中
参加学生:デザイン・工芸学科
担当教員:美術学科 馬場章、デザイン・工芸学科 吉田潤一郎
協働連携先:鴨川和棉農園
場所:鴨川和棉農園・自然の宿くすの木

【関連ページ】
*にこぷん
*オーストリッチーズ
*GM
*baishakhi

■プロジェクトの概要
この取組みは、とても身近にありながらもあまり知られていない「ワタ」という素材に目を向け、土作りから収穫、さらに糸から布になるまでを、『はぐくむいやし』をテーマに実践するプロジェクトです。平成21年から活動を継続しています。
今年度は、学校内の敷地で棉を育てるだけでなく農園への視察・研修、糸紡ぎの体験、相模原市環境情報センターにおける全7回の親子体験講座「親子でわたに触れてみよう」の開催などたいへん充実した活発な活動を行いました。

■成果
□第1回 鴨川和棉農園研修
日時:2011年9月19日(月)11:00〜16:00
場所:鴨川和綿農園
和棉栽培の専門家から、和棉のより良い育成方法や手仕事での加工の仕方を学び、棉畑見学、コマを使った糸紡ぎ、チャルカ(ガンジー考案の糸紡ぎ機)を使った糸紡ぎ、かせ作りを体験。最後に鴨川和棉農園作、棉の成育法・綿の加工法についてのDVD鑑賞を行いました。

1.和棉を育てる土壌について
土に窒素が多く含まれていると、茎や葉ばかりが大きく育ってしまい、良い種が残せなくなる。植物が花をつけてから種になるまでを生殖成長と言い、生殖成長に切り替わると、棉は種を残すことを重要事項とする。生殖成長に入っているにも関わらず、肥料を与え続けると、いつまでも茎や葉が育ってしまうため、生殖成長に入る7月頃までに、土壌の肥料が抜ける様に配慮することが大切だということを学びました。
2.和棉について
「和棉」は昔、日本各地で栽培されており、さいたま棉・かわち木綿・ゆみが浜棉・茨城地棉など、土地の名前が付いたものが存在します。例えばさいたま棉はさいたまの土壌、気候に合うので、さいたまで栽培されていた棉のことを言います。各土地によって良く育つ棉が、各土地で育てられていました。現在では、日本の風土に合った和綿の育成は減少し、実りが大きい洋棉が多く育てられています。土地の風土に合った棉は、害虫が付きにくく、霜に強いというメリットがあり、それは農薬を使わずに済むと言う事であり、土にも人にも害を及ぼさない結果に繋がる事を知りました。
また、数種類の棉を隣接して育てると品種が混合してしまうため、一種ずつ適度な距離を保ち育成することが大事である。
3.糸紡ぎについて
wataken.が行うワークショップ内の糸紡ぎでは、「自分の手で身近なものから」という考えを大切にしているため、段ボールと編み棒で作ることの出来るスピンドル(糸つむぎ機)を使用しています。鴨川農園では、二つの糸紡ぎ機を使っていました。一つは、wataken.のワークショップで使用している簡易スピンドルと同じ原理・形状で、手作りの木製スピンドル(コマという)です。もう一つは、インドのガンジーが開発した手動機械式のチャルカという糸車です。このチャルカを使うと、スピンドルよりもはるかに早く、さらに頑丈な糸を紡ぐことが出来ます。今後もwataken.では元来取り入れている“自分の手で身近なものから作る手作りスピンドル”を主としますが、ガンジーが考え出したチャルカの技術は、歴史ある糸紡ぎの技術の一つとして今後も参加者に伝え、ワークショップなどで実演していきたいと考えています。

□第2回 鴨川和棉農園研修
開催期間:2011年10月15日(土)〜10月16日(日)
場所:自然の宿くすの木
鴨川和綿農園
今回は、鴨川和棉農園のホームページから申し込んだ人などに、wataken.メンバーが合流するかたちでした。30代〜60代までの幅広い年齢の方が集まっていました。
様々な視野で「綿」に興味・関心を持った参加者と、意見交換をすること、参加者の方々や田畑氏ご夫妻と時間をかけて棉について話をすることを努めました。
「第1回視察・研修」(2011年9月19日)の開催場所とは異なり、廃校になった分校(小学校)を宿泊施設として使っているところに宿泊しました。棉の加工作業は小学校に隣接した体育館で行なわれ、広い空間を存分に使って作業する事が出来ました。
懇親会への参加、棉くり、弓を使ったワタ打ち、チャルカを使った糸紡ぎ体験、棉畑で棉の収穫と盛りだくさんでした。最後にDVD鑑賞(ガンジーについて)を行いました。

1.弓を使ったワタ打ち
棉を紡ぐ前準備として、綿の繊維の方向を揃える作業があります。その作業では、昔ながらの「弓」と呼ばれる道具を使いました。弓は、名前のごとく「弓」の形で、手持ち部分が木で出来ており、糸が張ってあります。張ってある糸を木の棒で弾き、そのときに綿も一緒に巻き込み弾きます。そうすることによって、絡みあい固まっていた綿がほぐれ、ふわふわとした状態になり、繊維の方向が揃えやすくなります。
2.ガンジーの運動について学ぶ
農園主の田畑氏はインドのマハトマ・ガンジーの思想に共感するところがあり、その知識をDVDで簡潔に伝えてくださいました。ガンジーは、イギリスが発明した蒸気機関によって、それまで人の手作業で行われていた工芸品が機械で大量生産されるようになった所に危機を唱えています。手作業で工芸品を作ることを仕事にしていた人たちは仕事がなくなり、国は利益のために戦争を起こすようになります。そこでガンジーは、人々が再び自分の手から物を作れるようにとチャルカ(糸車)を発明しました。棉を育て、糸を紡ぎ、布を織ることで機械化が進み、人が手から物を作れなくなることを防ごうとしました。
ガンジーはインドのカースト制度外にいるアウト・カーストの人々の解放運動を行ったことは知っていましたが、戦争の火種となった機械化や廃れていった手工業への考えを持っていたことを、この鴨川農園の研修で初めて知り、深く学びました。
3.指での糸紡ぎワークショップ
田畑氏のワークショップでは糸を紡ぐ際に、コマ(スピンドル)やチャルカなどの道具から始めずに、まずは自分の指で紡ぐということから始めます。
糸を紡ぐには、まず種と繊維=綿を別々にします。棉の固まりの中から種一粒分を取り出し、その周りについた繊維=綿を指で丁寧にむしります。指を使って種から離された綿を重ね、端をつまみ撚りをかけていくと糸が紡げます。この行程を入れることで、道具に対する理解や、必要性、人間の力に対する考えがより深まると感じました。
4.他の参加者との交流
参加者の中(30代〜60代の女性)で多かったのは、普段はパソコンに向かって仕事をしていて、そういった生活の中で綿を育てるなどの手仕事や農体験に憧れや興味を持って参加を希望した人です。そこで感じたのは機械などの無機質なものや、豊かな自然から離れた都会に暮らす人ほど自然を求めているということです。将来は自給自足の生活がしたいという夢を語った人もいて、自分の将来、夢を語る姿はとても刺激になりました。また、電気に対して疑問を持ち、自宅に冷蔵庫や洗濯機を持っていないという人もいて、そういった生活をしている人に初めて会って話をきいたので、新鮮でした。
また、鴨川農園のスタッフとして、ワークショップ時のみお手伝いにきている方がいました。その方は個人でも棉栽培・加工をしており、wataken.のワークショップに参加してみたい、と言っていただけました。wataken.としても、その方に講師という形でワークショップに参加していただけないか検討中です。

■今後について
学習した内容をまとめた小冊子を制作中です。

協働連携先:鴨川和棉農園・・・千葉県鴨川市にある自宅で農園経営と、日本各地の在来の棉の種子を30種ほど育てている。日本各地の気候風土に適したワタ種の普及活動の一環として、ワタの栽培から糸つむぎ、ハタ織りなど様々なワークショップを開催している。

講師:田畑 健(たはた たけし)氏
1951年生まれ。
日本綿栽培、自然卵養鶏、無農薬有機野菜・米作り等の農的暮らしを営む。
鴨川和棉農園代表。コットンボール銀行参与。和棉のタネを守るネットワーク事務局長。
大量に輸入される安価なワタによって、1200年もの長い間、日本人が大切に育ててきた日本綿が絶滅の危機に瀕しているのを知り、ごく少数の日本綿の種を手に入れ、毎年畑でこのワタを作り、種を配布し、日本人の生活の原点になる衣のこと、日本綿の大切さを訴えている。
また、日本綿が日本人の生活に生かされるためには、誰もが簡単にワタを紡ぎ、ハタを織ることが出来るようになる技術を習得できるようになることが大切だと考え、日本やインドを廻り、糸紡ぎやハタ織りの技術を習得し、誰でもが簡単に習得できるように様々な工夫をして、これまで多くの人にワークショップを通じてその技術を伝えてきた。
そして、インドで出会ったガンジーのチャルカの思想こそ、世界の貧困や南北格差、環境問題、そして自らの生き方を考え、変えていくことの出来る鍵を握るものであると考え、その普及の為、下記の本を出版して各地の講演会などでこの思想の大切さを訴えている。
編著『ガンジー自立の思想 自分の手で紡ぐ未来』(地湧社刊)
小冊子『ワタをめぐる情報と人と暮らしの交流誌 わたわたコットン』、『和棉のタネを守るネットワーク交流誌 わわたネット21』発行人
ホームページより抜粋
HP:http://homepage2.nifty.com/wamen-nouen/index.html

1 - 環境センターWS_コマを使った糸紡ぎ 2 - 環境センターWS_草むしり 3 - 棉の芽 4 - 環境センターWS_棉の芽を観察する 5 - WS_配布物 6 - 環境センターWS_ミキサーで大豆をすりつぶつ 7 - 環境センターWS_育った棉を観察する 8 - 環境センターWS_秋空気持ち良い屋上の庭園 9 - 環境センターWS_和紙の糸作り、撚り方の説明 10 - 環境センターWS_植物による循環のお話 11 - 環境センターWS_完成作品と棉 12 - 大学庭園で和棉つくり 13 - 棉のはたけ 14 - はじけた棉 15 - 育てた棉を観察する
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