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Project F 糸が結ぶセルビアと日本
活動報告201120102009

実施期間:平成21年4月〜継続中
参加学生:ファッション造形学科、工芸学科、デザイン学科、美術学科
担当教員:ファッション造形学科 佐久間恭子 外部講師 新田その
場所:本学相模原キャンパス、その他
協力:特定非営利活動法人 ACC(危機の子どもたち・希望)、セルビア現地姉妹団体(Zdravo da ste)

■プロジェクトの概要
【主旨・目的】
人々がそれぞれの環境によってどのような文化や生活を営んでいるのか、国際的貢献とは何かについて考えること。また自分が出来る活動は何か、美術大学で学ぶ学生だからこそ出来ること(絵画・染織・編・刺繍・デザイン・・・)や世界共通の表現について考察し、発見へつなげるとともに国際的視野を広め行動するきっかけをつかむことを目的としています。

【活動内容】
美大生だからこそのアウトプットやクリエイティブな感性と、おばあさんたちの刺繍や編み物などの伝統的技術を活かした協働制作やワークショップの開催など、NPO法人ACCの協力のもと伝統文化やアートを通した交流を行っています。協働制作作品の展示発表・販売など、学生たちの熱意ある取り組みは、おばあさんたちが心の張りを取り戻し生きる喜びへとつながっています。一方学生たちは国際的視野を広め、人と人、心と心のつながりの大切さを感じるとともに、積極的に行動する力を養い、大きな力を蓄え、成果を上げています。
学生たちは、ACCにおける旧ユーゴスラビアの勉強会やセルビアのスタディツアーへの参加など、セルビアについての理解・ボランティアについて考えることから始め、ワークショップへも積極的に参加するなど、とても熱心に活動しています。作品提案のデザイン画・サンプル制作も染織・編など授業での経験を活かして、自発的に工夫や試作を行い、難民であるおばあさん達との協働制作を通した心と心の交流にも、温かい手ごたえを感じています。女子美祭、JAMロビーの展示発表、作品販売、ACC代表の講演会などで活動内容を広く紹介、学生同士の信頼関係も強く役割分担もしっかり行ってまとめ上げた経験は、日常生活に対する新たな気づきや、国際的視野を広めるきっかけになっています。

■成果
1. 女子美祭 平成22年10月
平成22年2月に学生たちがACCを通じてデザイン提案した作品は、おばあさん達の伝統を受け継いだ刺繍や編物、織物など、丁寧な手仕事と独特の配色でまとめられ、約束通り10月の女子美祭に間に合うよう送られてきました。
女子美祭ではファッション造形学科の展示スペースを借用して作品展示、チラシを用意、学内及び一般の皆さんへ配布・紹介するとともに作品販売も行いました。また「おばあさんの手」プログラムの一環として行われたワークショップの過程や学生のデザイン提案・ワークショップコラボレーションを紹介するタぺを開催しました。展示内容と学生たちの説明はとてもわかりやすく、多くの皆さんの共感を得て、多くの方々に喜んで作品を購入していただき売上上々。残された課題としてはセーター・靴下など、日本人のサイズをおばあさん達に伝えること、デザイン提案にもう少し時間をかける、検討の余地があること、需要と供給のバランスがとれるとよい…など。制作したものが売れることは、おばあさん達の励みにもつながることとなるでしょう。

2. 教育GP「素材と環境展」展示 平成22年12月11日〜22日
JAM(女子美術大学美術館)ロビーにおける教育GP「素材と環境展」展示報告では、展示準備の段階から学生たち9人の強い絆と自発的な企画力、行動力には目を見張るものがありました。女子美祭での経験を踏まえ、さらに検討を重ねたうえで作品展示方法・タぺの説明内容・写真を丁寧にわかりやすくまとめ上げました。期間中、JAMロビーの展示作品の近くで行った作品販売では、美術館観覧の一般のお客様にも興味を持っていただき購入していただくことができました。作品自体の実用性、デザインと手仕事の魅力が伝わり、身につけてみたい・使ってみたい・プレゼントしたい気持ちが購入意欲に結びついており、おばあさん達と学生たちの手仕事とデザイン、感性のコラボレーションは自然に受け入れられているようです。
実は、おばあさん達には作品を制作するとわずかですが工賃が支払われていますが、学生とのコラボレーション作品に関しては工賃の支払いを断られたそうです。心なしか普段制作している作品よりも丁寧で意欲的な仕事をしているようにも感じます。
おばあさん達が持っている伝統的技術や独特の配色・感覚を活かしたい、より素晴らしく展示したい、手に取ってもらいたい、多くの方達におばあさん達のことを伝えたい・・・そのような気持ちのパワーが伝わる展示となりました。

3.講演会 平成22年12月22日
『人道支援におけるアートの役割〜「糸が結ぶセルビアと日本」に寄せて』
「素材と環境展」最終日、ACC代表(心理支援の専門家)の講演会を実施しました。講演の中では、セルビアでの活動の中で偶然出会った難民のおばあさんたちの心理的・社会的サポートのために始まった「おばあさんの手」プログラムによる手仕事を通した交流の紹介がありました。また、難民の心が求めるものは何か、物資なのだろうか?心が癒え活力を取り戻すには長い時間がかかるのだから、人間としての尊厳を持って生きることや対等な関係性が「続く」ということが求められているのではないかというメッセージ、人道支援の目的は平和であり、さらにアート・文化の力はお金や物資ではなく、感性の力によるものであることなどを、丁寧にわかりやすくお話ししてくださいました。
セルビアの難民となったおばあさんたちにとって、「私たちも人の役に立てる」「心にかけている人たちがいる」ことの実感が生きがいにつながっているようです。高齢で難民になったスラボイカさんの葬儀で息子さんは最後に、「日本の皆さんと交流し、作品が日本で紹介されたことは、最晩年の母の幸福であり誇りだった。」と語られたそうです。
また、代表から、「糸が結ぶセルビアと日本」=「糸むす」については、異文化の存在を知識ではなく、感性として認識し、未知のものへのときめきを持って活動のパワーとしている、とても純粋で熱心なグループだと感じてくださっているとの言葉を頂きました。
日ごろからワークショップや勉強会で、とても丁寧に、優しく接してくださっているACC代表初めメンバーたちの導きのおかげで、ACCとの絆もしっかりしたものになりお互いに信頼できる存在となっています。このつながりも素晴らしいものです。

■今後について
学生たちはおばあさん達との協働作品制作という交流を通して心の繋がりを確認しながら、お互いの生きがいに向かって動き始めています。しかし、おばあさん達の心が癒え、活力を取り戻すには長い時間がかかると思われます。わたしたち女子美生が、知ること、行動することの大切さを自ら感じ、この活動を多くの人たちに伝えるためにも、後輩へと継続していくことが必要だと感じています。
教育GPが終了した後も、新メンバーを募り1年目は同好会、2年目からはサークルとして活動を行う予定です。平成23年度も女子美祭をはじめ、学外ギャラリーにおいて、協働作品展示・販売・ワークショップなどの活動報告を行うことを計画しています。

1 - 女子美校庭の桜を背景に"糸むす"メンバー 2 - セルビアから届いた丁寧な手仕事 3 - 10月 女子美祭:展示販売風景 4 - 女子美祭:おばあさん達へのメッセージ 5 - 女子美祭:活動報告展示風景 6 - 12月 教育GP「素材と環境展」展示風景 7 - 「素材と環境展」おばあさん達の作品販売 8 - 「素材と環境展」ACC代表松永さん講演会 9 - ワークショップ:毛糸を投げて名前を呼び合う 10 - ACC事務所にてデザイン提案ミーティング 11 - ワークショップ:学生の作成した作品 12 - デザイン提案 13 - セルビアから届いたワークショップ作品 14 - セルビアから届いた作品の完成を喜ぶ 15 - ワークショップ作品制作中の風景 16 - セルビアのみなさん
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